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第73回🐣『寄り添うとは...』🐤 法人就労自立支援事業統括所長 竹本 智恵
マザー・テレサの言葉です。
立ち止まった時にシンプルにこう考えます。「何のために」ではなく、「誰のために」と。いつでも、中心は子ども達や利用者の方々です。そこがぶれなければ、進んでいけると思っています。そして、目の前の一人のために、とことん寄り添う覚悟を決められるかどうかです。それも、生半可な覚悟では無理だと思っています。
「出逢ったら一生の付き合い」と覚悟を決める。又は、「覚悟を決めて出逢う」といった丸ごと受け止める覚悟です。私は、そうしてこの道を進んできました。
最近、私の周りでこの覚悟について考えさせられる出来事が重なっています。これは、常に思いを新たにしなさいという事だと考えます。ですから、そんな思いを文字にしてみました。自分自身を鼓舞するためにも。
そして、人には〝いつも変わらずそこにいてくれる人〟の存在が必要です。人は、その存在があれば、立っていられます。〝その人〟は、ただそこに居るだけでいいのです。皆、日々孤独と闘ったり、居場所を求めたり、落ち込んだり、笑顔になったり等々、葛藤の中で生きています。
私は、〝その人〟になれるように、これからも寄り添い続けたいと思っています。出逢えた事に感謝しながら、微力ですが無力ではないと信じて、今日も進みます。皆さんにも、〝その人〟が変わらず傍にいてくれますように祈ります。
2025.08.26
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第72回🌼『君の名は・・・』🏠児童養護施設 鳥取こども学園 副園長 田村 千亜紀
「なんでホームは花の名前だ?」
地域小規模児童養護施設『たんぽぽ』で暮らすQ君が帰りの車中、唐突にそう聞いてきた。その声はなんとなく不満げだ。
「『あかり』って誰が名前つけた?」
なるほど。そういえばさっき『あかり』で暮らす幼児さんたちを追い越しながら手を振ったっけ。高学年男子は自分の暮らす『たんぽぽ』のかわいらしい名前に少し引っかかったようだ。
それぞれの事情を抱える子どもたちが暮らす家(ホーム)に玄関はあるけれど表札はない。本園ホームにはホーム名の看板?は出ているが地域小規模児童養護施設は見た目はごくごく普通の民家である。
本園『ふじ』『ひまわり』『こすもす』『つくし』(一時養育ホーム『はちみつ』)
本園の入所ホームには草花の名前が付いている。特に歴史の長い『ふじ』『ひまわり』、まだ歴史の浅い『こすもす』『つくし』。いずれも四季折々の中で一度は目にしたことがある親しみやすく愛らしい草花だ。音もやわらかい。だからこそ小さな子どもでもおぼえやすいし呼びやすいだろう。なおかつ、それぞれの草花の持つ素朴なイメージ、しなやかさや明るさ可憐さやまっすぐさなどは容易に想像ができ、昔も今もホームの名前に頭をひねった方々の思いやりと願いをその背後に感じることができる。
地域小規模児童養護施設『いろどり』『あかり』『かつらぎ』『たんぽぽ』
『いろどり』は鳥取こども学園初の地域小規模児童養護施設。園内で募集して、あるミュージシャンの楽曲にインスパイアされたこの美しい名前に決まった。とりどりの個性が彩るさもないけれど確かな日常がイメージされている。
『あかり』はスタートメンバーの大人と子どもが一緒に考えた名前。家を照らすあかりであり、家を出た子どもたちの未来を照らすあかりであり、いつでも帰って来られるように灯されたあかりでもある。
『かつらぎ』は本園から一番離れていて、唯一小中学校区が違う地域にある。だからこそ、地域にしっかりと根を下ろし愛されるようにと願いを込めて地域名がそのままひらがな表記されている。奇をてらわずわかりやすい、伝わりやすさでいえばピカイチの響きのいい名前だ。
そして『たんぽぽ』。地域に出て3年目で新参だが、実は一番の古参でもある。『いろどり』『あかり』『かつらぎ』は新設された地域小規模児童養護施設だが、『たんぽぽ』はもともと本園にあったホームがそのまま地域に引っ越した。だから古くて新しいのが『たんぽぽ』。名前のイメージ通り、小粒だけれどたくましく明るいそんなホームだ。『たんぽぽ』と名付けた人のあたたかさが時を超えて伝わってくる。
少し不満げなQ君のご機嫌を伺いながら言葉を返す、
「『あかり』はSさんに聞いたらわかるかな。『たんぽぽ』の名前を付けたのは誰かなぁ園長に聞いたらわかるかなぁ・・・昔々の園長かなぁ・・・。実はねQ君『たんぽぽ』は学園の中でもずーーーっと昔からある歴史のながーーーいホームなんだよ」
と、重々しく答えるとQ君の目がきらりと光った(ように思う、実際の私はハンドルを握って前を向いていたが)
「え?そうなん??マジで???」
先ほどの不満げな声が一瞬にして明るさを帯びた。どうやらQ君は私の返答のどこかにポジティブ要素を見出してくれたようだ。あぁよかった、きっかけは何であれホームにもその名前にも愛着を持ってくれたらうれしい。
“名前はその人のためだけに用意された 美しい祈り”
“祈りは身体の一部に変わり その人となった”(毛里武作「名前は祈り」より)
だから今日も心を込めて呼びたい、たんぽぽのQくん、と。
2025.02.28
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第71回🎄『次なる養育者へのバトン』🎅乳児院 鳥取こども学園乳児部 副院長 渡 美由紀
「幼い子どものゆたかな育ち」応援助成事業により今年も6人の幼児の七五三のお祝いを実施することができています。
この事業は、株式会社ストームレーベルズ(レコード・映画制作会社)からの寄付をもとに、社会的養護施設等(乳児院、里親家庭、ファミリーホーム)で生活する児童のゆたかな育ちを応援することを目的として、子どもたち一人ひとりが成長後、自らの生い立ちをたどることができ、自らの糧として社会的養護施設等での育みをふりかえることができるよう、七五三のお祝い費用の一部を助成してくださる事業です。ちなみに株式会社ストームレーベルズはご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、嵐、SUPER EIGHT、KAT-TUN、Hey!Say!JUMP、なにわ男子が所属するレコード会社です。このような取り組みもされているとは、まさに感謝カンゲキ雨嵐です!!(笑)
毎年この事業の案内が来ると対象の児童をピックアップし、フォトスタジオでの撮影日と神社に参拝する日を保護者と打ち合わせます。今までの子どもたちはフォトスタジオでの撮影で緊張して固まったり、泣き出したりしてしまう子どもが多かったのですが、今年の子どもたちは違います。さすが現代っ子!! 写真慣れしており、すぐにカメラマンのお姉さんにも慣れてポーズを取り、笑顔が溢れます。自分からポーズを決めて「撮って」と言う子まで・・・。
そんな素敵な写真が納められたアルバムが先日手元にやってきて皆にお披露目されました。「かっこいいでしょ」「これ○○くんだで」と鳥取弁丸出しの得意顔で教えてくれます。衣装も和装と洋装があり、子どもたちが自分で「〇色のがいい」と着たいものを選んだそうです。また、神社への参拝時もウロウロすることなくじっと座って神妙に祝詞を聞くことができたというエピソードに写真を見ながら「大きくなったなあ」と感慨深く、目頭が熱くなりました。
このような貴重な機会をいただき心より感謝申し上げます。この七五三のアルバムは子どもたちの大切な成長の記録の1ページとなり、乳児部を巣立つ際に次なる養育者へのバトンのひとつとして繋いでいきたいと思います。
追記:前回の私のリレーブログ(2022年10月26日寄稿)でご紹介した「さつまいも」の行く末ですが・・・(覚えていらっしゃる方はいないかもしれませんが・・・)
新しい年を迎えた頃には姿はなく、どこかへ旅立っており・・・私は見届けることができませんでした・・・残念!!鳥取こども学園乳児部では、Amazonの「乳児院支援プログラム」に2023年11月1日より参加しております。
以下、全国乳児福祉協議会会長のメッセージ抜粋になります。この度、アマゾンジャパン合同会社と「乳児院支援プログラム」を立ち上げることとなりました。Amazon.co.jpの「ほしい物リスト」に、子どもたちに必要なものを載せることによって、Amazon.co.jp利用者の方々がそのリストをご覧になり、ご賛同いただいた方々からご支援いただけるというAmazonならではの仕組みです。この取り組みを通じた支援によって、乳児院で生活する子ども一人ひとりの成長に向けた安全で豊かな環境の整備と養育につながっていくことを期待しています。またより多くの方が乳児院を知っていただくキッカケきっかけとなると大変嬉しいです。家族と離れて暮らす子どもたち一人ひとりが安心・安全な生活を送るために、みなさまよりあたたかい
ご支援を賜りますようお願い申しあげます。
2024.12.18