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第28回『新年度を迎えて』 児童養護施設 鳥取こども学園 園長 田中 佳代子
毎年、学園前の桜並木のつぼみが膨らみ、開花とともに新年度の訪れを告げてくれています。
今年も日に日に開花が進みほぼ満開ですが、子どもたちはどんな気持ちで新学期を迎えるのだろうかと心によぎります。新型コロナウイルスの関係で、小・中・高等学校と2月終わりから突如のお休みとなり、進級・進学を迎える子どもたちは、学年最後のまとめ(勉強はもちろん友達とのつながり等)の時期を奪われた形で新年度を迎えます。子どもたちはいつもと変わらぬ笑顔で過ごしていますが、いろいろな想いを抱えているのだろうと思うと心が痛みます。
そして、学園も一年で一番大きな変化の時期となりました。
進学、就職、家庭復帰で巣立っていく子ども、新しく仲間に入る乳児部等からの子どもたち、退職の職員に新規の職員、ホームを異動する職員など。別れの区切り(身体は離れても心はつながり続ける学園ですが)としていつも行っているホーム行事や外食での思い出つくりも今年は大幅に自粛ムードで心にぽっかり穴が開きそうです。小規模で家庭的な養育を昔から行っている児童養護施設なので、ホームで一緒に暮らす友達や職員が変わることは、大変なのです。お別れの行事や外食で気持ちの区切りのきっかけを持ち、時間とともに心の準備を重ねてゆく、とても大切な時間が奪われているのです。
そんな状況下でも、子どもたちも職員も少しでも楽しく有意義に過ごそうと試行錯誤を重ねているのが伝わってきます。
私はそんな素敵な子どもたちや職員に、『みんな、頑張ろう』と心でエールを送っています。
昔、鳥取こども学園に勤める職員の歓迎の挨拶に『不幸の会にようこそおいでくださいました』と言っていた時代がありました。子どもたちを幸せにするために、職員は自分の時間や自分の心を削るので、はた目には『不幸』と見えるかもしれない。そういう意味が込められていました。でも、語る職員の顔は幸せに満たされていました。『不幸の会』は子どもたちからたくさんのエネルギーをもらって『幸せ』を感じさせてもらっていました。
令和2年度、これから始まる新年度もいろいろなことが待ち受けていると思います。
子どもたちも職員(私も含め)も自分の心を削りすぎないように、いい加減で『幸せ』を感じられる一年でありますように。
地域社会から、虐待で苦しむ子どもたちが救われますように。
地域、関係機関の皆さまのご理解・ご支援をいたたきながら歩みたいと思いますので宜しくお願いします。
2020.04.01
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第27回『暖かい冬の日に』乳児院 鳥取こども学園乳児部 副院長 竹森香理
世界の各地で新型コロナウイルス感染症が流行し、3月になってすぐに日本各地の小中学などは突然休校となりました。楽しみにしていた行事を自粛したり、縮小したりと子どもや周りの大人たちたくさんの方が困られていると思います。そんな、非日常的な出来事が目の前で起こり戸惑う私たちをよそに、乳児部の乳幼児たちの様子はいつも通り。ただ、遊びに出かける場所が限られてしまい自由度がちょっぴりなくなりました。
3月といえば、乳児部にとっても別れの季節。大きくなった子どもたちは次なる育ちの場へ。お話がたくさんできるようになり大人とのやり取りも一段と楽しめるようになった子どもたち。賑やかな活気のある毎日を届けてくれるのはこの子たちだと感じています。
その子どもたちと1年を通して、“わくわくタイム”という遊びの時間を作り、楽しんできました。公園や海、バーベキューなどワクワクすることをたくさん体験しました。この時間は、子どもたちが普段一緒に生活している職員ではない、ちょっと離れたところにいる職員(おっちゃん・おばちゃん的な関係とでも言いますか・・・)との時間です。
ある暖かい冬の日。行きつけのかにっこ館で遊んだ帰り道。小雨に日差しがまじる(狐の嫁入り)中、車を走らせていると、しばらくして目の前に大きな虹が現れ、「わぁ~」と大はしゃぎする子どもたち。私が、「ラッキーな日だね!」というと、「なんで?(ラッキーなの?)」「なんで?」と。車で追っかけても逃げていく虹に「なんで?」「なんで?」と車中は疑問符だらけ。学園に着いてもまだ出続けている虹にみんなで声をあげて「ラッキー!」と叫ぶ。「これからもいいことあるね。」とお話しながらしばらくの間、空にかかる虹を見ていました。
みんな、元気で心も体も大きく育て!!と願わずにはいられないひと時でした。
2020.03.17
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第26回『心を寄せて下さるみなさまへ』 児童心理治療施設 鳥取こども学園希望館 副館長 水野壮一
こんにちは。鳥取こども学園希望館の副館長兼女子ブロック長の水野です。
先日、子どもから「水野さんって、何でいつもニコニコしてるの?」と言われました。同じ日に、中学校の校長先生から「あなたからは、何故かラテンを感じるねぇ」とお褒め?頂きました。モットーは「明るく楽しく」で、物事のいい面を見て、楽天的に生きていきたいと考えています。(それゆえ、軽率な失敗が多いのが悩みの種ですが…)
明るさだけが取り柄?
そんな私ですが、希望館にたどり着いた子どもたちの、理不尽な体験から来る悲しみや怒り、彼らの努力だけでは容易に解決できない悩み、それに寄り添い続ける職員や保護者の方々と向き合っていると、時折、本当につらくなることがあります。
また、「自己責任論」「リスク管理」「働き方改革」「施設不要論」…正論めいた理屈が切り棄てや無理解となり、この世界の、誰も知らない隅っこの暗い場所に希望館がぽつんと取り残され、子どもと職員が苦しんでいる…上手く表現できませんが、身震いするような悔しさや寂しさに覆われてしまう時もあります。
悩むゴリラの図
そういう感覚に陥ってしまったときは、学園や希望館に心を寄せて下さる方々のことを思い出すようにしています。
子どもたちに温かく声をかけて下さる地域の方々、ボランティアに来てくださる人の顔を浮かべます。
学園だよりの寄付者一覧をゆっくり眺め、寄付のおかげで建てることのできた園内の建物を一つ一つ見て回ります。
子どもたちを大切にしてくださる学校の先生や関係機関の方々との、協働と連携の歴史を振り返ります。
私はクリスチャンですので、鳥取教会で毎週の礼拝に集う信者のみなさんの学園への祈りと愛を思い浮かべます。
また、学園に出入りする業者さんの働きぶりを思い出したりします。
そして、学園を巣立っていったOB.OGの名前を一人ずつ呟いてみます。
すると…あら不思議!楽天的な私は「うん、色々と大変だけど、希望館の未来は明るい!!」と心が晴れ、明るく楽しい希望館の実現に、また一歩踏み出そうと思うのです。
学園、希望館に心を寄せて下さる皆さんに心から感謝を申し上げます。
鳥取こども学園希望館
副館長・女子ブロック長 水野壮一
2020.02.13