リレーブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園 - Part 20社会福祉法人 鳥取こども学園 | Page 20

社会福祉法人 鳥取こども学園は、キリスト教精神にもとづいて創立されました。その基本理念は『愛』です。

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  • リレーブログ 第11回 地域小規模児童養護施設 前田ブロック長

    平成27年4月1日に3つ目の地域小規模児童養護施設「かつらぎの家」を開設しました。
    わたしは、3つの地域小規模児童養護施設ブロックのブロック長、また、新設の「かつらぎの家」のホーム長としてスタートすることになっていました。しかし、初日の4月1日に急病で倒れ手術、入院となり3ヶ月休ませていただきました。年度初めの現場はどんなに動揺したことでしょう。本当に迷惑をかけました。という簡単な言葉では済まされないぐらいの大変な日々を子どもたちと職員に押しつけてしまいました。
    でも「わたし」がいなくても現場はまわるんです。(ひねくれて言っている訳ではなく)
    皆、やってくれるんです。出来るんです。大丈夫。その様に自分に言い聞かせて休養していました。実際、皆よくやってくれています。感謝します。
    また、感謝と言えば、倒れたのは職場(本園事務所内)だったんですが、皆さんの判断力、行動力に救われました。当日、その後の優しい心づかい、真心に感謝です。皆さんのおかげで今こうして生きていることができています。

    今、わたしは3つの地域小規模児童養護施設の家をフラフラと巡っています。各家の職員の相談役だったり、必要に応じて各家に行かせてもらっています。ひっかきまわしているところがあるかもしれませんが。

    ある家の小1の女の子の笑顔がいいんです。ニンマリ(?)カッーと笑う(?)いやいや、どう表現したら良いのかわからないぐらいの笑顔です。純粋で一生懸命の笑顔でこちらもうれしくなります。この笑顔を守っていきたいものです。

    ある家は3月末までいたところです。やはり、親しみもあり、ホッとする家です。3月末までの立場と今の立場は少し違い客観的にみています。毎日の生活の先入観をなくして接してみようと思っています。この様な立場の人間も必要かと勝手に自分の存在価値を見出そうとしています。

    ある家は職員が「いつ来ますか?最近来てないですよね。。。」と声を掛けてきます。今は必要とされてますが、だんだんと煙たがられるのかと。これも、わたしの仕事かと。

    あっ、地域小規模児童養護施設の説明がありませんでしたね。地域小規模児童養護は家庭的環境を子どもに提供していくこと、施設本体の役割を地域に開かれた形にしていくことを目的に開設しました。本園の小規模ユニットが、そのまま地域の一軒家にやってきたのです。子どもの定員は6名、職員は3人+食事支援の方1名のグループホームです。小学校、中学校は地域の学校へ通学しています。子ども会、地域行事の参加をして交流をしています。地域の方々が児童養護施設や、そこでくらす子ども達をより良くへの理解していただける様努力しています。


    2015.07.29

  • リレーブログ 第10回 「さとせん」のお仕事 乳児部 清水(里親支援専門相談員)

    「今日は、初めてサトちゃんと会った日なんです。」。

     久しぶりに電話をかけてきたサトちゃんの里親、藤本さん夫妻の言葉です。私が覚えていたのは、サトちゃんの誕生日とサトちゃんが乳児部から藤本さんの家に引っ越しをした日でした。藤本さん夫妻にとっては、初めて出会った日がとても大切な記念日だったのですね。驚きました。そして、記念日が、決して藤本さん夫妻にとって楽しく、明るい未来を想像できるドラマチックな出来事ではなかったことも思い出しました。

     初めて藤本さん夫妻に出会ったサトちゃんは、手をつなごうと近づく夫妻から逃げだしました。それでも藤本さんが手を握ろうとすると振り払っていました。一緒にお散歩に出かけたのは良いのですが、藤本さんから距離をとり一人だけ先に先に歩いていきました。藤本さん夫妻に見えるサトちゃんは、後ろ姿か、ぷいっと視線をそらす横顔ばかり。まるで、「この人は知らない人!そんなに見ないで」、「私になれなれしくしないで」と言わんばかり手と手の態度でした。

     初めての出会いがこんな様子でしたから藤本さん夫妻のショックは相当のことだったと思います。こんなに邪険にされたら夫妻の心が折れてしまうのではとハラハラしましたが、夫妻は「また会いに来ます」と笑顔の即答でした。

     それからは、藤本さん宅での同居開始を目標にして、サトちゃんと藤本さん夫妻が出会う度に乳児部や子ども家庭支援センターのスタッフ、藤本さん夫妻とも何度も何度も話し合いを重ねました。学園周辺のお散歩から始め、地域の公園、ショッピングモール等々へと何度も何度もお出かけを重ね、やっと藤本さん宅への一泊お泊まりにたどり着いています。

     子どもの発達課程で愛着形成に重要でない時期はありません。サトちゃんのお世話をしている乳児部のスタッフには、サトちゃんが人見知りをすることは、喜ばしいことです。ですから、健康に成長しているサトちゃんのことを思うと、藤本さん夫妻との出会いの日、いわばマイナスからの出会いにこそ価値があり、サトちゃんと藤本さん夫妻の記念日として大事にしてくれていることがわかり嬉しく思いました。そして、半年以上の準備を重ねて、サトちゃんと御夫妻の生活が始まって、記念日が訪れています。藤本夫妻は、サトちゃんが「可愛くて可愛くて仕方ない」という風情です。サトちゃんもすっかり、藤本家の一員となってい姿を見るとこの仕事をしていて良かったと思えるのです。

     里親登録申し込みの後に養育里親基礎認定前研修で施設実習があります。先日、ご夫婦で里親登録を希望されている鈴木さんの実習を乳児部で受け入れました。子どもたちが人見知りすることを予想して、あらかじめ鈴木さん夫妻に心構えをしてもらいました。鈴木さんの腕に抱かれてすやすやと眠る子、もうこれ以上行けないという部屋の隅まで鈴木さんと距離を取ろうとする子、乳児部スタッフのそばから少しずつ離れて鈴木さんとかかわろうとする子など様々でした。実習を終えた鈴木さん夫妻の感想は、「人見知りをするものだとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。」、「想像していた施設、想像していた施設の子どもとは全く違った。」、「職員も子どももみな幸せな暮らしをしていることがわかった。」、「そんな子どもに、里親として何ができるのか考えると不安に思う」とのことでした。

     里親支援専門相談員の仕事を始めて、4年目を迎えました。子どもと里親との関係は、「縁」、「運命」、「相性」まかせにして語られるものではありません。適切な支援と子ども・里親・職員の創意工夫と努力によって、関係が成長・発展していくのであるということをサトちゃんと藤本さん夫妻から学びました。

     サトちゃんの気持ちを想像すると

     ◎「全力で拒否期」(あなたはだあれ? わたしになにをしようとしているの?)

     ◎「安心できる大人発見期」(わたしにわるいことはしないのだなぁ!)

     ◎「特別な存在発見期」(わたしのことをだいすきなんだ!わたしも、だいすき!)

     こんな感じではないでしょうか?

     私達のいままでのやり方は、子どもの注目を里親に向けるための方法として、それまでの養育者とのつながりを「切って」、そのつながりを里親に「つなぐ」という方法でしたが、うまくいったケースばかりではありません。

     「切って」、「つなぐ」やり方がなかなかうまく行かないのは、これまでの養育者と子どもが「つながっている安心」を切り捨ててしまうので、子どもは安心して新たな養育者を発見するのが難しくなるのではないでしょうか。「切って」、「つなぐ」のではなく大切な人との関係を「つないだまま」、「つなぐ」のが子どもにとって安心とともに里親を養育者として選ぶことが可能になるのだと思います。

     里親と「さとせん」やお世話をするスタッフは、子どもの安心や特別感を引き出す演出を一緒に考え、協力することが必要です。藤本さん夫妻には、サトちゃんとの関係を育む中でたくさんの葛藤があったことと思います。同じようにサトちゃんにも大きな葛藤があったのでしょう。この葛藤を受け止めながら子どもの気持ちを汲み取り、寄り添おうとするかかわりそのものが、子どもに伝わり、劇的な関係の成長をもたらしたのだと思います。手から手へ

     実習で初めて子どもの人見知りを経験した鈴木さんご夫婦も、近い将来、里親として別のサトちゃんと出会う日が来るでしょう。「さとせん」が出会い、見守ってきたサトちゃんと藤本里親の物語を伝えながら、子どもが里親を特別な存在として発見していく過程を応援したいと思っています。

     

     私たち里親支援専門相談員は、東部里親会や里親支援とっとりと協働して、里親制度の普及啓発活動に力を入れています。施設職員である私たちが里親を語ることは、支援を必要としている子どもたちのこと、その子どもたちの受け皿である施設の役割を語ることでもあります。施設と里親がいい協力関係を築いていくことは、子どもたちの未来の選択肢が広がることにつながると信じて、この普及啓発活動も続けて行きます。

    皆様の御理解と応援をお願いします。(文中のお名前は仮名です。)

    鳥取こども学園乳児部 里親支援専門相談員 清水暁子

    里親制度のこと 里親支援とっとり


    2015.06.24

  • リレーブログ 第9回「鳥取こども学園希望館20歳の誕生祝い」山下 学(希望館副館長)

     1994(平成6)年4月に誕生した、鳥取こども学園希望館開設20周年の祝いの会が6月1日(月)に鳥取こども学園体育館を会場に催されました。正確に言うと希望館は今年既に21周年を迎えていますが、20周年の昨年は記念事業の生活棟改築整備工事中だったため、祝いの会は竣工を待ってということにさせていただきました。

    希望館生活棟竣工次第(外)レイヤー統合希望館生活棟竣工次第(内)

     希望館は、それまで80名定員だった養護施設(現:児童養護施設)鳥取こども学園の定員を45人に減らし、入所30人、通所10人の定員で、情緒バランスに不調を来している子どもを対象に、短期間治療・養育・教育の支援を提供する施設(以下、情短施設)としてスタートしました。全国で16番目となる医療・福祉・教育が協働する施設は当時珍しく、管轄する行政機関にとっても現場にとってもあらゆることが初めてだらけだったように思います。

     児童養護施設と情短施設の違いは、医師(精神科or小児科)と看護師、そしてセラピスト(心理療法担当職員)が配置されていることです。生まれたばかりの情短施設鳥取こども学園希望館には、それまで養護施設で培ってきた養育文化をベースに心理的、精神科的視点を加えた新たな養育文化を創造することが大きな課題でした。しかし、それは言葉で言うほどには簡単なことではありませんでした。日々展開される様々な問題に体当たりでぶつかりながら、子どもと一緒に一つひとつ解決を積み上げる手探りの実践が続きました。頼みの綱は、副館長で施設精神科ドクターのスーパービジョンとカンファレンスでしたが、病院の臨床が施設現場にそのまま適用できる訳ではなく、実に多くのことを子どもたちから学ばせてもらってきたように思います。そうやって子どもらと向き合った20年の歩みの中で「子どもの最善の利益の追求」を合い言葉に実践を積み上げ、希望館における「生活型・小舎ブロック制」の実践が全国から注目を集めるまでに成長してきました。そして今、鳥取こども学園で長く育んできた小舎制の取り組みは、これからの社会的養護におけるスタンダードとして認められつつあります。

    竣工式竣工式記事

     「小舎制の生活」は昭和36年当時、法人として「子ども最善の利益の追求」をある意味具現化させたものでした。希望館は開設以来そのスタイルを踏襲し続け、この度竣工の生活棟を改築しました。改築にあたっては約2年半に渡って子どもと職員で話し合いを重ね、皆の「夢を形に」できたと思っています。勿論、私達だけで成し得たことではありません。国、県、市の関係機関や募金呼び掛け人を引き受けてくださった方々、募金に協力してくださった方々、そして設計監理の(株)山下設計工房様、施工の(株)藤原組様他、多くの方々のお力添えがあっての結果です。竣工式に来賓として臨席くださった平井鳥取県知事様の祝辞の中で「子どもたちの城」というお言葉をいただきましたが、正に私達は神様と多くの皆様に支えられて「子どもたちの城」を与えていただいたんだと思います。

    竣工広告

     一口に20年と言いますが、人で言えば成人式を迎える年です。そういう意味では、今回生活棟の竣工を機に、多くの皆様にお集まりいただいて希望館の成人式をしていただいたように思います。誠に、ありがとうございました。これでようやく一人前ということなのかもしれませんが、まだまだ駆け出しの若造でもあります。更なる成長のため、皆様の益々のご支援並びにご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


    2015.06.11