里親支援とっとりブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園

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里親支援とっとりブログ

  • フォスタリングチェンジプログラムの想い出①

     令和元年に、「フォスタリング・チェンジ・プログラム(以下プログラムと略)」を実施しました。これは、自らの家庭で子どもを預かり育てる里親さんのため【だけ】に開発された、子育て技術向上のプログラムです。イギリスから日本に輸入され、まだ数年しか経過していませんが、多くの自治体が導入し始めています。

     プログラムは、毎週1回3時間を12週連続、計36時間というかなりのボリュームなので、参加される里親さんに相当な負担を強いたのですが、にもかかわらず8名の方が大変熱心に取り組まれ、修了されました。

     法人ブログで、プログラムの想い出を振り返っていきたいと思います。

     

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    【1.はっきりと明瞭に】

     プログラムは、積み木を積んでいくように、段階的に知識と技術を身に着けていきます。初段階では、保護を必要とする子どもを預かり育てることへの基礎的な理解と、こころえを習いました。この初歩トレーニングのひとつに「はっきり明瞭にものごとをとらえる」といったものがありました。

     例えば「うちの子は本当になまけもの!」「うちの子はいっつもかんしゃくを起こすきかんぼうだ!」「うちの子は嘘ばっかり!」と言う養育者がいるとします。しかし本当に「本当に!」なまけものなのでしょうか。その子は、一生懸命自分のできる範囲を取り組んでいるかもしれません。本当に「いっつも!」「ばっかり!」でしょうか。ある条件のときに限っているかもしれません。こういったラベルを貼る決めつけを、よくやりがちではありますが、ただの感情の発散であって、正確でなく事実でもありません。感情的にセリフを吐き捨てるのではなく、養育者は、いったん気持ちを落ち着け、しっかり子どもの様子をみつめ、なんでそういったことをするのか、背景・文脈はどうなのか、といった事実をはっきりと明瞭に確認することが求められます。

     

     この初歩のかんがえ方が、プログラムののちのちまで出てきます。まず、子どもの行動のその背景、原因、こころもちをはっきりくっきりみつめます。このことにより、良いことは、はっきりくっきりと、たくさんほめます。案外、望ましいことをしている時を、しっかり認めていないことは多いです。

     

     

     そして直したいこともはっきりと注意します。「ちゃんとしなさい!」「きちんとしなさい!」「バタバタしない!」ではなかなか伝わりません。「車の中ではお椅子におしりをペタンとつけて、楽しくおしゃべりしようね。立って動きまわるのはダメよ」といった感じです。支援者に相談する際ももちろんはっきりくっきりです。

     プログラムは、こんな感じではじまりました。また続きをアップしていこうと思います。


    2020.01.22

  • 初夏の草木の育ちをみて

    里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦 

     この歳になってというべきか、この歳になったからというべきか、最近、草木の栽培をたしなんでいます。もともとは、メダカ飼育の添え物(アクアテラリウム、という、水中で生き物を飼育し、水上で草木を育てるという、いわば『箱庭』のような趣味です。まだ、ひと『箱』も完成していませんが)として取り組んでいたものを、この初夏は、草木がぐんぐんと伸び、萌えるさまが楽しく、栽培をメインにたしなんでいます。

     素朴で安価なものを好んでおり、さらには、ほうぼうに無心しています。と、いいますのも、里親さん、当法人の職員、児童相談所の職員さんなどなど、実は、業務の関係者に同好の士がたくさんいらっしゃり(中には、元庭師、花屋さん、元ペットショップ店員、華道を嗜んでいる方もいらっしゃいます)、お会いするたびに株分けしていただいていますので、うちの家には、鳥取県各地由来の植物が伝播しています。もう二十数鉢にもなったでしょうか。

     いくつもの草木との出会いを通して、いくらか、育ちの仕組みを知りました。

     エアープランツ(チランジア)という、洒落た雑貨屋さんなどによく置いてある、鉢植えがいらない植物があるのですが、この植物は「空気中の水分を吸うので水やりがいらない」と言われており、そのとおりにすると元気が無くなってしまいました。職場の後輩であり師匠でもある植物学者Sくんに聞くと(学者は冗談ですが、それほど造詣が深く、「S植物店」「Sプラントクリニック(元気がない植物の蘇生を請け負っているので)」などの異名を持っています)「チランジアは、乾いた土地に自生しているが、そういったところは、夜、霧が深く、また、定期的に『スコール』がある。夜、霧吹きで湿らせ、時折『スコール』のようにドブンと水にいれるといった水遣りをする」と習いました。『スコール』(!?)に少し笑ってしまいましたが、それぞれの生態に見合ったタイミングでの、水遣りが必要ということなのですね。

     カランコエ、という植物が、ぼくの事務所の外壁沿いに、忘れてられてちょりんちょりんかりんかりんに干からびていたのですが、ちょりんちょりんですのに、小さな花をつけていました。その様がとても愛おしく、持ち帰り、石を除いてふかふかに耕した、栄養のある土に植え、十分な水と日光をあたえましたところ、みるみる間に、ふくよかに身を太らせ、友人に株分けするほどに繁りました。

     モンステラ、という植物を、より元気にしようと、肥料をがんがんに、土に埋め込んだところ、土も、モンステラも腐ってしまいました。ほどほどの土に戻したところ、元気を取り戻しました。がんがんに、根に近しいところに濃く配置するのではなく、ほどほどの距離と濃さが大事なのですね。昔から「肥は遠くに置け」ということわざがあるそうです。

     アデニウム、という植物を買って帰ったところ、すぐに葉が枯れて落ちてしまいました。ひょろりと残った茎のみを鉢に植え、がっかりと肩を落としていましたら、ふた月もたった後に新芽が出てきました。環境が変わると一度葉を落とす、というのはよくあるそうで、鉢の底を覗くと、しろじろとした新しい根がしっかりと根付いていました。地上からは見えない部分で、ふた月、いっしょうけんめいに根を張って、やっと新芽を出したのですね。植木屋さんが言うには、植え替えしたあと、2年も沈黙し、その後芽吹くといったような樹木もあるそうです。

     

     カヤツリ、という草の元気が無いので調べてみますと、鉢のなかにびっしりと、冗長に伸びた根が絡み合って、ガンガンに固まってしまっていました。からみきった根をザクザクと切り、ほどき、いきのよい根のみさわやかに水に戻しますと、すくすくしゃっきりとしてきました。

     つまづきになる石をのぞき、ふかふかに耕した、栄養のある土に植え、こんがらがって固まりきった根を切って整理し、しっかり日を当て、水と肥料を適度に、それぞれに見合ったタイミングと距離と量であたえ、風を通して、毎日見守りながら、じっくりと待つと、のびやかに根を張り、みずみずしい芽を出すようです。光合成の生物の、根や茎や葉っぱのみならず、脳神経細胞も、ひとのこころも似たところがあるのではないでしょうか。この歳になってというべきか、この歳になったからというべきか、こんなことを考えています。


    2019.06.12

  • 東部サロン「児童相談所元所長に聞く、児童相談所の取り組みと苦労、大事にしていること」 

      里親支援とっとりが行うサロンについては、里親さんがどんなことを知りたいか、どんなことを知ってもらいたいか、ということを考えて、毎度毎度、趣向を凝らしたテーマを設けています。里親さんは、保護を必要とする子どもを預かり、養育に全力を尽くすのがお役目ですが、目の前の子どものありようのみならず、自らの元に子どもが預かられるまでの、家庭での暮らし、保護者と子どもの想い、家族分離の過程など、様々なドラマを知っておく必要があります。去る10月5日、児童相談所長を務めた経験のある、鳥取こども学園希望館花川館長より、児童相談所の取り組み・実情・苦労と大事にしていることなどを聞き、ざっくばらんにおしゃべりしながら、理解を深めました。

     児童相談所は、全国にだいたい210ヵ所あるそうです。鳥取県には3ヵ所ありますが、550万人が暮らしているお隣の兵庫県に、出張所も合わせて9ヵ所しかないのに比べて、人口57万人の鳥取県に3ヵ所あるのは、手厚い体制だそうです。

     児童相談所の業務は、地域の実情やニーズの把握とそれに対応した事業、専門的な知識や技術を必要とする対応、児童や保護者、家庭に関する必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定、児童の一時保護、里親に対する相談や情報提供、助言、研修などの援助、などなど、多岐に渡っていますが、やはり主となるのは児童の相談と、必要な際の保護です。

     鳥取県に3ヵ所ある児童相談所のうち「福祉相談センター」が、東部の相談を担っています。女性相談課もあるので、総合して、「福祉相談センター」という名前なのだそうです。児童福祉司さんは、お1人で、在宅ケースを20人~40人、里親さんに措置、施設に入所しているケースを30人~40人も担当しているそうです。もっとも大事にしていることは、「子どもにとってもっとも良い、利益の追求」「子ども、保護者の意向を十分に聴く」ということだそうです。

     この子を今のままお家に置いておけない、と考えた場合「一時保護所」という部署で身柄を預かりますが、複数人の子どもたちとの、生活を通じて様子を知り、検討するそうです。「この子とこの子はいっしょにしたくないなあ・・・」とか、「この子はご飯の好き嫌いが多いなあ・・・」「お行儀が悪いなあ・・・」「よく隣の子にちょっかいを出すなあ」などなど。「この子は、きつい言葉を使ったり暴れたりしていたけど、落ち着いて一緒に話すと楽しくおしゃべりできるなあ」というようなことを感じとり、その後の支援に生かすそうです。

     児童相談所というお役所は、ずっと前から、例えば、非行問題が多発していた昭和60年代(ぼくは小学生~中学生のころですが、大問題でした。学校の中を自転車で走り回って掲示物を破いてまわったり・・・)の頃は、「非行問題をなんとかしろ」と。また、不登校が問題になったころは「不登校をなんとかしろ」と。そして今は「発達障害を~」「児童虐待を~」だそうです。人を増やすお金もないまま、また、どうしたら良くなるかという技術も知識、先行例も無いまま、時代に要求される子どもたちの問題について、その都度その都度、頭を絞り、汗を絞りながら対応してきたそうです。

     なまなましい業務の大変さとともに、興味深い話もたくさん聴きました。このたび厚生労働省が示した「新しい社会的養育ビジョン」の根本の考え方に、「ハリー・ポッター」の作者J.K.ローリング氏の取り組みが少なからず影響を与えているそうです。J.K.ローリング氏が作った非政府組織「ルーモス」(ポッターが唱える、明かりがつく呪文ですね)が、子どもが家庭的な環境で育つことの重要さを強く訴えており、この考えを参考のひとつにしているそうです。

     ぼくもハリー・ポッターは大好きで、ポッターやハーマイオニー、ロンたちの冒険と、日々の暮らしを、わくわく、ほっこりしながら見ていました。まだ全話見ていないのですが、ちなみに初期の、みんなが小さい頃の騒動が好きです。完結編のあたりでは、ポッターはスリムマッチョの好青年に、ハーマイオニーはものすごい美人になってしまいましたので。J.K.ローリング氏は、離婚、母の死、無職、貧困、うつ病などを経験し、子育てを続けながら、ハリー・ポッターシリーズを書き上げました。作中で、最も恐ろしいディメンター(吸魂鬼)という黒いフードとマントを纏った、周囲の人々の幸福な気持ちを食べ、絶望と憂鬱をもたらし、現れると周囲の空気も冷たくなるという生き物が出てきますが、この怪物は、J.K.ローリング氏が経験したうつ病がもとになっているそうです。「光よ!」という呪文の名前の団体の取り組みも踏まえ、ポッターのみならず、J.Kローリング氏個人についても、改めて興味が湧きました。

    ディメーター

     

     ポッターの世界と日本の社会的養育のつながり、現代社会と子どもを取り巻く環境の変化、その時代時代に対応してきた児童相談所、と、さまざまなことを考えさせられるサロンとなりました。参加された里親さん方も、いろいろと感じるところがあったと思います。今後も、学びや気づきの豊かなサロンを開催していこうと思います。

     


    2019.01.29