リレーブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園 - Part 19社会福祉法人 鳥取こども学園 | Page 19

社会福祉法人 鳥取こども学園は、キリスト教精神にもとづいて創立されました。その基本理念は『愛』です。

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  • リレーブログ 第9回「鳥取こども学園希望館20歳の誕生祝い」山下 学(希望館副館長)

     1994(平成6)年4月に誕生した、鳥取こども学園希望館開設20周年の祝いの会が6月1日(月)に鳥取こども学園体育館を会場に催されました。正確に言うと希望館は今年既に21周年を迎えていますが、20周年の昨年は記念事業の生活棟改築整備工事中だったため、祝いの会は竣工を待ってということにさせていただきました。

    希望館生活棟竣工次第(外)レイヤー統合希望館生活棟竣工次第(内)

     希望館は、それまで80名定員だった養護施設(現:児童養護施設)鳥取こども学園の定員を45人に減らし、入所30人、通所10人の定員で、情緒バランスに不調を来している子どもを対象に、短期間治療・養育・教育の支援を提供する施設(以下、情短施設)としてスタートしました。全国で16番目となる医療・福祉・教育が協働する施設は当時珍しく、管轄する行政機関にとっても現場にとってもあらゆることが初めてだらけだったように思います。

     児童養護施設と情短施設の違いは、医師(精神科or小児科)と看護師、そしてセラピスト(心理療法担当職員)が配置されていることです。生まれたばかりの情短施設鳥取こども学園希望館には、それまで養護施設で培ってきた養育文化をベースに心理的、精神科的視点を加えた新たな養育文化を創造することが大きな課題でした。しかし、それは言葉で言うほどには簡単なことではありませんでした。日々展開される様々な問題に体当たりでぶつかりながら、子どもと一緒に一つひとつ解決を積み上げる手探りの実践が続きました。頼みの綱は、副館長で施設精神科ドクターのスーパービジョンとカンファレンスでしたが、病院の臨床が施設現場にそのまま適用できる訳ではなく、実に多くのことを子どもたちから学ばせてもらってきたように思います。そうやって子どもらと向き合った20年の歩みの中で「子どもの最善の利益の追求」を合い言葉に実践を積み上げ、希望館における「生活型・小舎ブロック制」の実践が全国から注目を集めるまでに成長してきました。そして今、鳥取こども学園で長く育んできた小舎制の取り組みは、これからの社会的養護におけるスタンダードとして認められつつあります。

    竣工式竣工式記事

     「小舎制の生活」は昭和36年当時、法人として「子ども最善の利益の追求」をある意味具現化させたものでした。希望館は開設以来そのスタイルを踏襲し続け、この度竣工の生活棟を改築しました。改築にあたっては約2年半に渡って子どもと職員で話し合いを重ね、皆の「夢を形に」できたと思っています。勿論、私達だけで成し得たことではありません。国、県、市の関係機関や募金呼び掛け人を引き受けてくださった方々、募金に協力してくださった方々、そして設計監理の(株)山下設計工房様、施工の(株)藤原組様他、多くの方々のお力添えがあっての結果です。竣工式に来賓として臨席くださった平井鳥取県知事様の祝辞の中で「子どもたちの城」というお言葉をいただきましたが、正に私達は神様と多くの皆様に支えられて「子どもたちの城」を与えていただいたんだと思います。

    竣工広告

     一口に20年と言いますが、人で言えば成人式を迎える年です。そういう意味では、今回生活棟の竣工を機に、多くの皆様にお集まりいただいて希望館の成人式をしていただいたように思います。誠に、ありがとうございました。これでようやく一人前ということなのかもしれませんが、まだまだ駆け出しの若造でもあります。更なる成長のため、皆様の益々のご支援並びにご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


    2015.06.11

  • リレーブログ 第8回「ミットレーベン~ともに暮らす~」藤野謙一(希望館副館長)

     僕は今、新築されたばかりの希望館生活棟の一室でこの文章を書いている。今日は休日で、天気は快晴。子ども達や職員達の笑い声、掃除機の音、洗濯機に異音が発生し「あーでもない、こーでもない」と議論する声が聞こえる。縁側から突然「ワッ!!!驚いた?!」と小学生が満面の笑みを浮かべて顔を出す。思わず窓を開け、笑顔で頭をなでる。何気ない休日の一面である。しかし、希望館の生活は、こんな和やかな日だけではない。純真無垢な存在であるはずの子ども達は、社会の歪みの中で様々な体験を経てここに辿り着くため、「自分を見てほしい!」「受けとめてほしい!」と身体全体で言葉や行動で表現し、職員も全身全霊を捧げてぶつかり受けとめる。日々繰り返される「生活」は、言葉にできないリアルな世界である。だから、僕は自分のエゴかもしれないが、ここを拠点として子ども達や職員と生活を共にしながら副館長等の活動をしている。

     先日、「ミットレーベン~故郷・鳥取での最後の講義~/糸賀一雄/第14回全国障がい者芸術・文化祭とっとり大会実行委員会/2014年」という本を購入した。この本は、「知的障がい児の父」「障がい福祉の父」と呼ばれた糸賀氏が知的障がい児施設鳥取県立皆成学園で行った故郷鳥取県の地における最期の講義で、ほぼ録音されている通りに再現されたものである。ドイツ語「ミットレーベン」とは、「ともに暮らす」という意味である。

     この本の中で、僕が特に気に入った箇所を抜粋する。

     「尻を拭くというような、鼻をズルズルの鼻をかんでやるというような、手にその感触がいつまでも残るような『ミットレーベン』の中で、初めて発言ができるというような発言もですね、私たちは尊重しなければなりません。それは、一隅を照らしているからであります。そんなことは、天下国家に関係が無いと人は言うかも知れません。言われてもいいです。言われたって構わない。しかし、必ずこの一隅を照らすところから、この子らが世の光となってくるのです。この世の光となってくるこの光というものが、この子らの存在そのものが、光輝いていくような、そういう育てというもの、教育というもの、指導というものが、社会の財産になる。専門職というのは、そういう働きをして下さる方々なんです。」

     講義では、他にも今でも色褪せず本質だと思われることが語られている。希望館は、小舎制生活型の施設にこだわって実践してきた。偶然なのか必然なのかわからないけど、糸賀氏の思想と希望館の思想が重なって、多くの学びを得た。ちなみに、これも偶然なのかもしれないが、糸賀氏は鳥取こども学園の近所で生まれ育ち、鳥取こども学園が繋がっている鳥取教会で受洗している。これも何かの縁なのか、歴史を感じる。

     これからも、希望館は「ミットレーベン」を中核に据えながら子どもと大人が共に歩み、現実を切り拓き、新しい未来を切り拓いていきたいと思う。

    参考 「ミットレーベン~故郷・鳥取での最後の講義~」のご案内

    http://db.pref.tottori.jp/pressrelease.nsf/0/03DC99F779BECDAB49257DA20000863D?OpenDocument

    玄関 裏側からの風景 完成間近となった希望館生活棟

     

     


    2015.05.07

  • リレーブログ 第7回 こころの発達クリニック 川口院長

     鳥取こども学園内にある診療所『こころの発達クリニック』の川口です。この度『リレー・ブログを!』と言う命が下ったのですが、コテコテの『アナログ人間』の私は、「ブログって何?」「しかもリレー?」と言うところからのスタートで、自分の走番なのにバトン・ゾーンにすら入ってもおらず、たまりかねた走り終えたばかりの第1走者の藤野園長がご老体にむち打って2週目を走ってくれました。ご迷惑をお掛け致しました。

      『デジタル』は確かに大容量の情報を効率良く素早く処理してくれて便利な物です。でも便利な物には落とし穴があるものです。現代社会もスピードを追求して余裕が生まれたかと言うと、かえって忙しくなってしまっています。デジタル時計はアナログ時計と違って、『間(あいだ)』がありません。やっぱり私には『間(あいだ)』があって、ファジーな『アナログ』の方が性に合っているようです。まぁ『ブログ』が『デジタル』って訳ではないのですが、パソコンがあってのものでしょうから。
     それから『言葉』も実はやはり『デジタル』だと思います。人と人との情緒的交流は本来『アナログ』だと思います。しかしそのコミュニケーションに、道具として文字面通りの『言葉』を使うと、コミュニケーションは『デジタル』になってしまいます。だから「言葉にすれば嘘になる」とか「行間を読む」と言う言い方があったり、「比喩・皮肉」と言う物も生まれたのでしょう。

     今年4月にクリニックも6年目に入りました。本当に月日が立つのは速いです。でもクリニックは外観も中身もそんなに変わっていません。手作りって感じです。レトロって感じです。昭和って感じです。実際患者さんがいろいろな物を作って持って来て下さったり、親しみを感じて下さったりしています。こどもたちは結構『遊びに』来てくれています。一応医療機関なのに。それで良いのだと思います。それが良いのだと思います。一つ位こんな『変な』クリニックもあって良いのではないでしょうか。クリニックに来て遊んで、エネルギーを補給して帰って頂ける、そんな居場所になれたら良いなと想っています。そのために『アナログ』感覚を失わず(『デジタル』部分も、『アナログ』に支えられた『デジタル』でありたい)、今後とも『間(あいだ)』を大切にしながら、手作りの福祉モデルに こだわった診療をして行きたいと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。

     

    こころの発達クリニック外観

    こころの発達クリニック外観

    子ども飛び出し注意(ワルシャワにて)

    子ども飛び出し注意(ワルシャワにて)


    2015.04.13