リレーブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園 - Part 16社会福祉法人 鳥取こども学園 | Page 16

社会福祉法人 鳥取こども学園は、キリスト教精神にもとづいて創立されました。その基本理念は『愛』です。

TEL. 0857-22-4200
ホーム > リレーブログ

リレーブログ

  • 第18回「ソーシャルワーク・ケアワークのスーパーバイザー」

     「山口県子どもソーシャルワーク研究会」から講演のご依頼をいただきました。いただいたテーマは「社会的養護関係施設における職員育成 ~スーパービジョン~」というものです。「事前にレジュメをください。」とのことで考えてみましたが、項目を提示するには、全体のデザインが必要でなかなかうまくまとまらず、思い付きをメモしてレジュメとしました。

     なかなか面白い文章が書けたのでリレーブログに掲載させていただきます。


    「ソーシャルワーク・ケアワークのスーパーバイザー」
    そもそも「スーパービジョン」って何なのよ。スーパーバイザーっていうけど、どんな人がスーパーバイザーなんですかね。「スーパーバイザー」は役割、役職なの?、それとも機能とか能力なの?。

    でもね、スーパーバイジーが「この人がスーパーバイザーなんだ」って選ぶことが出来るのなら、良いスーパーバイザーとそうでないスーパーバイザーを振り分けることは出来るけど、スーパーバイザーが「私は良いスーパーバイザーです。」って自分で言うのは、信用して良いのだろうか?。企業なら「あの人がスーパーバイズをすると売り上げがアップした」なんて目に見える成果で評価をすることが可能ですよね

    スーパーバイザーに1級とか初段とかのランキングがあって、1級の人はこうこう、初段の人はこれ、達人になったらこんなことが出来るって決まっていると分かりやすいのだけど、スーパーバイザーの良し悪しなんて、決められないし、もしも決められるのならやっぱりスーパーバイジーが決めることになる。それにその仕事で利益を得る人が決めるってこともありそうです。

    子どもには、元々備わっている機能があるのだけど、ひとつは「認知する力」。外界の出来事を自分の中に取り入れて、自分を高めることです。もうひとつは「感動する力」です。「ああそうか!」って納得したり、理解する力。つまり「Aha!反応」ですね。そして最後が「学ぶ力」です。学ぶと勉強は違っているのだけど、子どもはいろんな場面でいろんなことを学んで自分の世界を拡げてゆくことができるのです。

    三つの機能は、すべての子ども、赤ちゃんにも重度の障害児にも必ず備わっているのです。赤ちゃんや障がい児に特別な配慮が必要なのは、この三つの機能を自覚して発揮して欲しいからなんです。何かが出来るようになるとかそれが継続して、成長して行くってことは、この三つの機能が備わっているから、それを周囲の大人が認めているから可能なことで、喜びのない訓練や練習を強制しても、なかなか身につかないのは、当然のことです。

    それともうひとつ「順位のない競争」っていうのだけど、子どもは誰か他の人、大人も含めて、自分が見たり聞いたり感じたりしたときに「僕もやってみたい」とか「私ならこうするのに」って誰かと競争するんですよね。それってどっちが上とか下とかがないから、「順位がない」のです。これはとても大事なことなんです。(1997年 鳥取大学 若狭蔵之助)

    この三つの機能と「順位のない競争」は、子どもだけのものかというとそんなことはなくて、大人だって同じなんだと思う。だって認知や感動、学びがなかったら大人は大人のままで成長しないことになる。仕事だからって手順を覚えりゃいいってものじゃない。先輩がやっていることをそのままコピーするのなら、いろんなお仕事がいつかはロボットに取って代わるか、すごく細かいマニュアルがあれば良いのです。

    もしも、あなたの同僚や上司、部下・後輩が認知する力や感動する力、学ぶ力がないなんてことはないけど、ちょっとおかしいっていう人はいると思う。そういう人にスーパーバイズをしても、なかなか難しい。スーパーバイズが指示・命令になってしまうのじゃないかなぁ。

    役割や機能で鵜呑みにせず、いろいろな取り組みを認知して、感動して、学びそして「自分のやって見たい」と思えるようなスーパービジョンは、素晴らしいスーパーバイズだと思う。でも、世間ではスーパーバイザー研修ってのはあるけど、スーパーバイジー研修ってのは聞いたことがない。これってスーパーバイザーの養成はするけどスーパーバイジーの養成はないってこと。

    ところが実際には、良いスーパーバーザーよりも良いスーパーバイジーが必要であって、いい加減なスーパーバイズでも、素敵なスーパーバイジーがいれば良いんだと思う。じゃあ、良いスーパーバイジーになるにはどうしたら良いのかってことになるけど、やっぱり良いスーパーバイズを受けることが重要。これって卵が先かニワトリが先かって話になるけど、スーパービジョンとかスーパーバイズってのは、特定の役割の決まったスーパーバイザーのものじゃないから、スーパーバイジーは、いろんなスーパービジョンを受け止めて「認知する力」と「感動する力」、「学ぶ力」を総動員して順位のない競争に臨むってこと。

    良いスーパーバイジーは、素敵なスーパーバイザーになれるのじゃないかなぁ。

    でも、実際にはこんなうまく行きやしないのは誰もが知っている。

     *******************************************************
     とても中途半端な終わり方ですが、山口県子どもソーシャルワーク研究会の会合 平成28年10月30日(日)で続きをお話しします。

    20161017 Rainbow

    鳥取大学で見つけた午後の虹です。

    鳥取こども学園希望館 西井啓二


    2016.10.18

  • 第17回 「社会福祉法改正、児童福祉法改正に想う」 法人常務理事 藤野興一


    ~「子どもの権利・人権」を柱に据えた子育ての推進を~

    ①2014年、子どもの権利条約採択25周年、日本国批准20周年を記念して「ヤヌシュコルチャックの足跡を訪ねる旅」を企画、ポーランドの首都ワルシャワを訪問しました。今年もトレブリンカ絶滅収容所訪問7月11日(月)~18(月)の日程で第2回の旅を企画しました。前回のコースにアウシュビッツを加えたコースにしたのですが、団長を務めることにしていた私は、直前に入院が決まり参加することができませんでした。残念でなりません。一行は7月18日無事帰国、その様子はポーランド政府の公式ホームページで見ることができます。ポーランド子どもの権利庁ブログ

    ②子どコルチャック先生もの権利条約は、第一次、第二次大戦のような悲劇を二度と繰り返さないために、未来を担う子どもたちの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」を中心に、子どもを権利行使の主体者とすることとした国際条約です。1978年コルチャックの実践を基にしてポーランドから提案されました。ゲットーに閉じ込められ、200人の孤児たちを養い、その中で、子どもたち自身による裁判所、子ども議会、子どもが決めた法律を作り、子どもは大人と同じ尊厳を持った人間であり大人の所有物ではないことを実践しました。そしてコルチャックと孤児院職員は、人間の尊厳を守り抜くために、200人の孤児たちとトレブリンカ殺人工場に消えたのです。アンジェイワイダ監督の映画「コルチャック先生」に克明に描かれています。

    ③2016年5月27日、「改正児童福祉法」が成立。1994年日本が「子どもの権利条約」を批准して以降初めて、日本の法律に、「健やかな養育を受ける権利」、「子どもの権利」、「子どもの最善の利益」等が規定された意義は大きく、感慨深いものがあります。法成立を受けて厚生労働省は、4つの検討委員会設置を決定。「社会的養護の課題と将来像(以下「課題と将来像」)」の再検討も含めて動き出しています。
     その第一は、「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」。第二は、「新たな社会的養育の在り方についての検討会」。第三は、「子ども家庭福祉人材の専門性向上のための検討会」。第四は、「市区町村の支援業務の在り方のための検討会」。となっています。

    ④「家庭的養護推進計画」「都道府県推進計画」は「3期・15年計画」の2年目を迎えています。「課題と将来像」は、現場実践の中で常に改革されねばなりません。この度の児童福祉法の改正を踏まえて、改めて「子どもの権利」の視点から施策の再構成が必要です。「検討会」が、それに応えるものとなることを願ってやみません。
     「子どもは人間である」と叫び続けて200人の孤児と共に強制収容所に消えたコルチャックの実践から生まれた「子どもの権利条約」を施設内外で普及し、日本の社会的養護実践に活かしたいと思うのです。

    ⑤そのような中で、2016年7月26日未明、相模原障がい者施設殺傷事件が起きました。神奈川県相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」に男が侵入し、入所者である障がい者(主に知的障がいおよび知的障がいとの重複障がい)19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせた男・U容疑者(26歳)は、その施設の元職員だったとのこと。U容疑者は、「障がい者は抹殺されるべき」という考え方を抱いており、その思いを文書化して衆議院議長に示そうとし、「ヒットラーが降りてきた。」とも言ったとのこと。障がい者を標的にした『ヘイトクライム(憎悪犯罪)』(沖縄タイムズ)です。

    ⑥1939年ナチスドイツとソ連軍のポーランド侵攻・ポーランド分割支配以降、ドイツ領となったオシフェンチム市にアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所、ワルシャワ近郊にトレブリンカ強制収容所などを建設。障がい者、政治犯、ロマ(ジプシー)、ユダヤ人を次々と大量に移送し、障がい者抹殺のために開発された毒ガス(チクロンB等)により、殺害された人数については、『ホロコースト百科事典』が各国の専門家の統計を合計し、559万5千人から586万人という数字をあげています。第一回、第二回ポーランドの旅を通じて私たちは本当に多くのことをこの肌身で学んだばかりです。

    ⑦私は、「相模原障がい者施設殺傷事件」「異常な精神障がい者による特異な事件」としてはならないと思います。石原慎太郎は、都知事に就任した1999年に障がい者施設を訪問した際、「ああいう人ってのは人格があるの鳥取こども学園 常務理事 藤野興一かね」「絶対よくならない、自分が誰だかわからない、人間として生まれてきたけれどああいう障がいで、・・・「おそらく西洋人なんか切り捨ててしまうんじゃないか」「安楽死につながるんじゃないか」と言い放っています。U容疑者の言っていることと大差ない。舛添前都知事のセコイ問題よりもこの方がもっと都知事としての資質を問われるべきであったが、当時さして問題視されず、その後4期13年にわたって都民は石原を都知事に選び続けたのです。

    「障がい者は生きていても意味がない」「障がい者は迷惑だ」「障がい者には税金がかかる」などという主張は、重度障がい者を本当に抹殺していったナチスドイツの優生学的思想と同じものです。今日本でもインターネット上に「障がい者不要論」が跋扈し、「在特会のアパルトヘイト」が公然と大音響街宣車を流し、西欧諸国でも難民受け入れ拒否が叫ばれ、ネオナチ党などのファシズムが台頭しています。「相模原障がい者施設殺傷事件」は、そのような社会的状況の中で醸成されたものなのです。

    ⑨子どもたちに関わる私たちは、戦後71年目を迎えて今一度、歴史を振り返り2度と戦争を繰り返さない平和への決意を固めねばなりません。そのためにも、子どもの権利条約を日本に定着させ子どもの権利・人権を柱に据えた子育て文化を培っていきたいと願うものです。

     「わたしは神が宣言なさるのを聞きます。主は平和を宣言されます。ご自分の民に 主の慈しみに生きる人々に 彼らが愚かなふるまいに戻らないように。主を畏れる人に救いは近く 栄光はわたしたちの地にとどまるでしょう。

     慈しみとまことは出会い 正義と平和は口づけし まことは地から萌えいで正義は天から注がれます。主は必ず良いものをお与えになり わたしたちの地は実りをもたらします。正義は御前を行き 主の進まれる道を備えます。」(詩編85-9~14)

    鳥取こども学園常務理事・園長 藤野興一


    2016.08.10

  • 第16回 「中国地区里親大会を終えて」里親支援とっとり 吉田 信彦

     去る平成28年5月28日から29日に、米子全日空ホテルにおいて、第63回中国地区里親大会を開催しました。200人強の方が参加され、盛会のうちに終了しました。この大会は、中国地区の里親と関係者が一堂に会して、養育の問題や里親制度の現状などの議論と研修を行うものです。里親支援とっとりは、鳥取県里親会事務局として大会を運営しました。
     基調となる講演では、子育て王国のリーダーとして、平井知事に里親への想いを語っていただきました。
    DSC_0189

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     観光から子どもの施策にいたるまで、鳥取県の取り組みを大変テンポよく、また、お得意のダジャレも交えてお話いただきました。鳥取県のトップが児童福祉についてしっかりとお話下さる姿に感慨ひとしおでした。
    DSC_0197

     

     

     

     

     

     

     

     



     また、鳥取短期大学・鳥取看護大学山田修平理事長に「命の呼応~人を育む、自分を育む~」と題して御講演をいただきました。
    DSC_0269 

     

     

     

     

     

     

     

     


     先人たちのことばを引用され、大変にエネルギッシュで示唆に富んだお話は、里親養育に携わる方々にとって大きな学びとなったと思います。
    DSC_0278

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     懇親会では、伯耆町の鬼面太鼓振興会さんなどが、大変に盛り上げて下さり、中国五県の里親並びに里親の支援者が、多いに親睦を深めました。

     各分科会は、今と未来の問題を取り上げ企画しました。  

     分科会①は「社会的養護の両輪となって~児童福祉施設と里親との連携~」
       施設と里親の相互理解と連携のあるべき姿について語り合いました。それぞれの立場の方から盛んに発言があり、熱い意見交換となりました。  

     分科会②は「実際どうなの!?お金の話」という企画
       ファイナンシャルプランナーの方を助言者にお迎えし、措置費制度が対象としない経費などについて意見交換しました。「子どもの育ちに対して、どういったお金が必要なのか。今後、子どもが自立して社会に羽ばたいていくにあたり、経済観念をどうやって教えていくのか」ということなどについて、熱心なディスカッションが行われました。  

     分科会③は「しっかりご存知?発達障がい」
       山陰労災病院長大野耕策医師を助言者にお迎えし、発達障がいの最新の情報を提供していただき、養育上の悩みにお答えいただきました。大野先生のお人柄どおり、優しく、わかりやすくお話いただき、参加者から大変に勉強になったとの声を多く聞きました。  

     分科会④は「施設と里親どっちがすごい!?」
        どんな子どもがどんな時に、里親に、又は施設に委託されるべきか討論しました。ディベートの手法を取り入れ、鳥取県里親会東部部会長の藤田里父と、鳥取こども学園竹下里親支援専門相談員がテンポよく進行し、参加者から「まだ話し足りない!」という声があがるほどの盛り上がりでした。

    DSC_0575

     

     

     

     








     多くの方のご支援をいただき、参加された方たちに、実りある学びを提供することができたと思います。また、運営した里親会員と、運営協力して下さった行政・児童福祉施設職員の方々とのパートナーシップも、更に深まったと思います。参加された方々、運営した側双方が、大変にエンパワーメントされたのではないかと、手前味噌ながら感じた、そんな大会でした。

     御参加いただいた中国地区の里親の皆様、関係機関の皆様、鳥取県内の里親・関係機関の皆様 ありがとうございました。


    2016.06.17