初夏の草木の育ちをみて | 社会福祉法人 鳥取こども学園社会福祉法人 鳥取こども学園

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里親支援とっとりブログ

初夏の草木の育ちをみて

里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦 

 この歳になってというべきか、この歳になったからというべきか、最近、草木の栽培をたしなんでいます。もともとは、メダカ飼育の添え物(アクアテラリウム、という、水中で生き物を飼育し、水上で草木を育てるという、いわば『箱庭』のような趣味です。まだ、ひと『箱』も完成していませんが)として取り組んでいたものを、この初夏は、草木がぐんぐんと伸び、萌えるさまが楽しく、栽培をメインにたしなんでいます。

 素朴で安価なものを好んでおり、さらには、ほうぼうに無心しています。と、いいますのも、里親さん、当法人の職員、児童相談所の職員さんなどなど、実は、業務の関係者に同好の士がたくさんいらっしゃり(中には、元庭師、花屋さん、元ペットショップ店員、華道を嗜んでいる方もいらっしゃいます)、お会いするたびに株分けしていただいていますので、うちの家には、鳥取県各地由来の植物が伝播しています。もう二十数鉢にもなったでしょうか。

 いくつもの草木との出会いを通して、いくらか、育ちの仕組みを知りました。

 エアープランツ(チランジア)という、洒落た雑貨屋さんなどによく置いてある、鉢植えがいらない植物があるのですが、この植物は「空気中の水分を吸うので水やりがいらない」と言われており、そのとおりにすると元気が無くなってしまいました。職場の後輩であり師匠でもある植物学者Sくんに聞くと(学者は冗談ですが、それほど造詣が深く、「S植物店」「Sプラントクリニック(元気がない植物の蘇生を請け負っているので)」などの異名を持っています)「チランジアは、乾いた土地に自生しているが、そういったところは、夜、霧が深く、また、定期的に『スコール』がある。夜、霧吹きで湿らせ、時折『スコール』のようにドブンと水にいれるといった水遣りをする」と習いました。『スコール』(!?)に少し笑ってしまいましたが、それぞれの生態に見合ったタイミングでの、水遣りが必要ということなのですね。

 カランコエ、という植物が、ぼくの事務所の外壁沿いに、忘れてられてちょりんちょりんかりんかりんに干からびていたのですが、ちょりんちょりんですのに、小さな花をつけていました。その様がとても愛おしく、持ち帰り、石を除いてふかふかに耕した、栄養のある土に植え、十分な水と日光をあたえましたところ、みるみる間に、ふくよかに身を太らせ、友人に株分けするほどに繁りました。

 モンステラ、という植物を、より元気にしようと、肥料をがんがんに、土に埋め込んだところ、土も、モンステラも腐ってしまいました。ほどほどの土に戻したところ、元気を取り戻しました。がんがんに、根に近しいところに濃く配置するのではなく、ほどほどの距離と濃さが大事なのですね。昔から「肥は遠くに置け」ということわざがあるそうです。

 アデニウム、という植物を買って帰ったところ、すぐに葉が枯れて落ちてしまいました。ひょろりと残った茎のみを鉢に植え、がっかりと肩を落としていましたら、ふた月もたった後に新芽が出てきました。環境が変わると一度葉を落とす、というのはよくあるそうで、鉢の底を覗くと、しろじろとした新しい根がしっかりと根付いていました。地上からは見えない部分で、ふた月、いっしょうけんめいに根を張って、やっと新芽を出したのですね。植木屋さんが言うには、植え替えしたあと、2年も沈黙し、その後芽吹くといったような樹木もあるそうです。

 

 カヤツリ、という草の元気が無いので調べてみますと、鉢のなかにびっしりと、冗長に伸びた根が絡み合って、ガンガンに固まってしまっていました。からみきった根をザクザクと切り、ほどき、いきのよい根のみさわやかに水に戻しますと、すくすくしゃっきりとしてきました。

 つまづきになる石をのぞき、ふかふかに耕した、栄養のある土に植え、こんがらがって固まりきった根を切って整理し、しっかり日を当て、水と肥料を適度に、それぞれに見合ったタイミングと距離と量であたえ、風を通して、毎日見守りながら、じっくりと待つと、のびやかに根を張り、みずみずしい芽を出すようです。光合成の生物の、根や茎や葉っぱのみならず、脳神経細胞も、ひとのこころも似たところがあるのではないでしょうか。この歳になってというべきか、この歳になったからというべきか、こんなことを考えています。


2019.06.12