第68回 🍚『幸せの食卓』🥢 鳥取こども学園希望館 医師 こころの発達クリニック 院長 川口孝一 | 社会福祉法人 鳥取こども学園社会福祉法人 鳥取こども学園

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第68回 🍚『幸せの食卓』🥢 鳥取こども学園希望館 医師 こころの発達クリニック 院長 川口孝一

 本年度5月末より週3日、月・火・水ホームで夕食を子どもたちといただくようになりました。30年前は短い期間でしたが他の日勤職員と同様に昼食を大食堂でいただいていたこともありました。学園の味が私には合っていて美味しくいただいていました。が、人見知りが強い私は、会食恐怖症と言えるくらい会食や宴会、懇親会の類が実は大の苦手なのです。そんな席で何を話して良いのかといつも悩んでしまいます。職場の宴会でも勢いで参加を申し込んでおきながら、その日が近付くにつれて憂鬱になっていきます。そんな時に急な診察依頼が入ると、ラッキー!、「ごめんなさい。急な診察で参加出来なくなりました」と、ドタキャン。園内では付き合いが悪い男で有名です(この事で悔やまれるのは、酒好きの故藤野興一会長と飲みながら会話の機会を逸してきた事です)。大食堂での昼食をしなくなったのは、食事しながら、皆さんと何を話していいのか分からなかったことと、他にもう一つ理由がありました。食後は自分の食器を自分で洗うのですが、当時シンクに蛇口が一つしかなく、食べ終わってさあ洗おうと立ち上がろうとすると他の職員が立ち上がるため、また着席。いつまで経っても洗えないのです。そんな訳で、次第に皆さんが食べて終わる様な時間帯を目指して大食堂に行くようになりました。しかしその内昼休憩にも診察が入るようになり、いつしか大食堂で学園の昼食をいただかなくなってしまいました。


 そんな私が何故夕食をホームでいただこうと思う様になったかというと、一つには老化です。入所児童さんの夜の診察(面談)を終わった後、デスクワークを終えて、帰宅して夕食を摂るのは、どうしても午後10、11時になってしまいます。軽く食べる位にすればよいのですが、(皆さんも経験がおありだと思うのですが)お腹はいっぱいなのに、頭が欲しがってたくさん食べてしまうのです。それで寝てしまうので、消化器系にも良くありませんし、睡眠の質も悪くなります。以前から周囲の勧めもあったので、週2~3日、18:00~18:30の間にホームで子どもたちと一緒に夕食をいただくことを思い切って始めました。始めは緊張してホームに向かいましたが、子どもたちがみんな(たぶん?)温かく迎えてくれるので救われています。久しぶりにいただく学園の食事はどの品もみな美味しく懐かしいい家庭の味でした。「美味しい」だけでなく「幸せ」って感じました。そこでの食事は、子どもたちとの談笑が美味しさをより引き立ててくれますし、診察室だけでは見られない子どもたちの姿にも触れることが出来ます。


 ある日、私の食事がついているはずのホームに行くと、「え!?ドクター。(食事)付いてないよ。聞いてない」って皆びっくりした表情に。「手違いかなぁ」って帰ろうとすると、すぐさまH君が「俺がチャーハン作ってやろうか」と。今度はS君が直ぐに席を立って冷蔵庫の中を探しながら「パンならあるぞ」と。「ありがとう。大丈夫だから」と帰ろうとすると、I君が「ドクター、ストップ。動くな!」と、諦めるな、何とかするからと言わんばかりに私を止めてくれました。

 

 そんなお兄さんたちの言動を優しく穏やかな眼差しで見ているT君。それぞれの子どもたちがそれぞれの形で表してくれた優しさに触れ感激しました。「なんて優しい奴らなんだ!」「なんて可愛い奴らなんだ!」と思いました(同時に「こんなに優しく育ててくれて職員さんありがとう!」って思いました)。美味しいお食事はいただかなくとも、その日は子どもたちの優しい気持ちでお腹も胸もいっぱいになりました。こんな子どもたちやホームの職員さんと、こんな美味しい食卓を囲める至福の時に感謝です。これからも食べさせてもらいに行くぞ!

 


2024.09.24