第15回 『新年を迎えて 皆様へのメッセージ』 法人常務理事 藤野興一 | 社会福祉法人 鳥取こども学園

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第15回 『新年を迎えて 皆様へのメッセージ』 法人常務理事 藤野興一

謹 賀 新 年

「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心にかなう人にあれ。」(ルカ:2-14)
神様に守られ生かされて、新年を迎えられますことに感謝申し上げ、皆様の格別のご支援に心からお礼申し上げます。

 学園にたどり着く子どもたちも厳しい道をけなげに生きています。歴史の未来である子どもたちに真っ赤に燃える太陽のように輝いて歩んでほしいといつも祈ります。
 しかし、私たち大人の非力を痛感します。私たち自身が輝いて生き、子どもたちに生まれてきてよかったと思える世界を残したいと切に願います。
 一期二年の二期目を迎えている全国児童養護施設協議会会長の活動も、お蔭様で2015年4月から、あまりにも低すぎた施設最低基準を「社会的養護の課題と将来像」のレベルにまで引き上げることが出来ました。ご支援いただいた関係各位に心よりお礼申し上げます。

 40年振りに大幅な職員配置増の予算が付いたとは言え、70万人の保育士不足と言われる現状では、人材確保困難に遭遇し、児童虐待の増加や子育ての行き詰まりに対応できず、人材育成と施設養育の質的強化が緊急課題となっています。
 2015年度を初年度とする「社会的養護の課題と将来像(以下「課題と将来像」)」実現に向けた歩みを確かなものにしたいと願います。

 しかし私は、「乳児院をはじめとする施設は悪で、里親が善である。一刻も早く施設から子どもを救出して里親や養子縁組を進めるべきだ。施設は金がかかりすぎ、里親は安くつく。」という論調が声高に叫ばれ、一部の学者も含めて政治的働きかけも行われ、勢いを増していることに危機感を覚えています。「施設内虐待」も多く語られていますが、児童養護施設に29,000人、乳児院に3,000人、里親に4,000人が措置されていて、里親家庭での虐待死事件と施設での虐待死事件を比べても里親の方が数的にも多いのです。こんな議論はしたくありませんが、施設に金をかけなさすぎたので施設での人権侵害を生み出してきたのであり、虐待や貧困の連鎖を断ち切るためにももっと社会的養護に税金を投入すべきなのです。「課題と将来像」は国連の子どもの権利委員会からの3度に渡る日本政府への勧告を受け、施設と里親と連携して子どもたちを社会で守り抜く体制を作ろうとする国としての計画です。

 今、社会的養護を必要としている子どもたちは戦災孤児の時代と違い、90%以上の子どもたちに親がいます。どんなにひどい虐待を受けた子どもでも、親に対して「いい子になるから迎えに来てね」と言い、子どもは親を求めて止まないのです。児童虐待への対応は親への支援が欠かせません。施設や里親は子どもを預かって育てるだけではなく、児童虐待予防も含む地域児童福祉の拠点としての役割が新たに求められています。

 戦後70年、児童養護施設は戦災孤児の保護・収容から始まり、ベビーブームの頃には乳幼児を、「非行」がピークの頃には「非行少年」たちを、不登校や引きこもりが社会問題化すれば不登校児童を、今は被虐待児や発達障害児が社会問題化しており、その受け皿となっています。多くの児童養護施設は、戦後70年、社会的養護を担い続け、地域児童家庭支援・社会的養護実践における多くのノウハウを蓄積してきたと自負しています。

 施設は里親育成支援の役割を果たしうるし、手厚い里親支援がないままに施設をつぶして里親へ移行せよとする主張は無謀であり危険です。大舎であろうが小舎であろうが里親であろうが養子縁組であろうが子どもの人権は守られねばならないのです。今、子どもたちの人権は学校でも施設でも地域でも家庭でも極めて危機的状況にあるのです。施設に繋がっている子どもはまだマシで、地域に放置されている子どもたちがもっとピンチだと言わねばなりません。
 2016年が日本の社会的養護にとって新しい地平を切り開く年となりますよう共に歩みたいものです。今年110周年を迎える鳥取こども学園はキリスト教社会事業の献身性と先駆性を掲げてその先頭に立って歩みたいと思います。

    2016年 元旦  

社会福祉法人鳥取こども学園常務理事・園長(全国児童養護施設協議会会長) 藤野興一 


2016.01.01