第30回ここに『在る(居る)』事の不思議を味わいつつ 鳥取こども学園希望館 兼 こころの発達クリニック 精神科医 川口孝一 | 社会福祉法人 鳥取こども学園

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第30回ここに『在る(居る)』事の不思議を味わいつつ 鳥取こども学園希望館 兼 こころの発達クリニック 精神科医 川口孝一

今年度4月より古巣である希望館とクリニックを兼務させて頂く事になりました。

 新型コロナの生み出す(ウイルスさんに悪気は無いのでしょうが、私たち人類に大きな『禍』をもたらしています)初めてだらけの事態に戸惑い窮屈さを感じつつ、長引く非日常の中で、これまで『あたりまえ』と思っていた事に『ありがたさ』を感じさせてもらい、更に貪欲に「元に戻るのではなく、新しい生活スタイルを生み出せないものか」とも考えたりもしています。こんなおとな以上にこどもたちは、先の見えない不安や窮屈さを感じつつ、それでも懸命に『今』を生きています。そんなこどもたちの姿(同時に共に在る保護者さんや職員の姿も)を見ていると、不憫さだけでなく、未来への希望も感じます。
 この度のクリニック外来診療の縮小に際して、ご協力頂いた(転院や診察時間の短縮等)患者さんや医療機関の方々に、また非常事態に際し手作りマスクを寄贈して頂いた方々に(写真の私の好きな『リサ・ガス』柄のマスクも患者さんから頂きました)、この場を借りて改めて感謝致します。ありがとうございました。
 ところで、このリレーブログの番が回って来た時、文書作成依頼があると必ずやって来る『憂うつ』君がやはりこの度もやって来ました。実は私はこどもの頃から読み書きが苦手でした。小学1年生の時には、担任の先生にただ1人(当時1クラス45人近くいたと思います)放課後残されて、本を1冊音読させられて(失礼、『させてもらって』ですね)いました(その甲斐無く、今も活字アレルギーです)。それに加えて、注意欠如多動症特性も色濃くあります。そんな私は医学生の頃は、読み書き苦手でじっとして居られないので(医師は理系ですが、文系要素も強い)精神科医には成らないだろうと思っていました。しかし気が付いたら、偶然の重なり合いで精神科医に成っていました。そして精神科医として仕事をしているうちに、「私が精神科医に成ったのは自分の治療のため(自分を知るため)だったのだ」と気付きました。そして仕事の内容も自分の気づきと平行して進んで行きました。職業選択には意味があるのだと思いました。そんな不思議を味わいつつ今も精神科医をしています。
 私の臨床理念は、小学2年生の担任の先生との関わりに原点があります。2年生の時、私は商売(和洋菓子屋)が忙しい家に学校が終わっても帰りたくなかったのか、担任の先生に「放課後に廊下を掃除させて欲しい」とお願いしました。先生が一緒にやってくれるとは思っていませんでした。ところが先生は特に理由を聴くわけでもなく、黙々と私と一緒に木造の長い廊下の乾拭きをくる日もくる日もして下さったのです。先生とのこの時間の心地良さを今も忘れていません。お陰で2年生が終わる頃には2年生の廊下はピカピカに成りました。「『doing』ではなく『being』」、それが私の臨床理念です。
 学園のこどもたちとの関わりが増えてくると思いますが、たまたま医師免許を持っている『おじいちゃん』として、こどもたちと伴に『在れ』たら良いなと願っています。よろしくお願い致します。


2020.06.03