里親支援とっとりブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園 - Part 8社会福祉法人 鳥取こども学園 | Page 8

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  • 整理整頓のこころがけ

    里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦

     

       以前、児童養護の要職をつとめられている方に、里親研修の講師をお願いした際、講義の最後に、こんなお話をしてくださいました。

    「児童養護の部門につとめ始めたころ、子どもと家庭のさまざまな困難に向き合うことについて『これはとてもハンパな姿勢で取り組めるものではないな』と痛感し、こころがけを決めようと思い立った。いろいろと勉強してまとめたところ『整理・運動・感謝』の3つに辿り着いた。

    『整理』については、持ち物、ノート、机の上はもちろん、業務内容や根本的な仕事の仕方、生き様、などなどを整理整頓し、なにごともスムーズに効率的に、ことがすすめられるようこころがけている。

    『運動』というのは、身体は、こころのいれものだから、まずいれものがしっかりしていないと、こころが揺さぶられると思った。なので、身体を鍛えることにした。わりあい続けられており、今でも、アマチュアの大会などに出場している。

    『感謝』については、そのままの言葉。うちは仏教の家なので、仏壇を掃除し、線香をたて、唯一覚えている簡単なお経を唱え、いま自分と家族がすこやかでいられること、仕事を続けていられることなどを先祖に感謝している」というお話でした。

     要職をつとめられている方ですから、雲の上の存在のように感じていましたが、わりあい、新任のころに『これはハンパな気持ちでいられない』と思われたところとか、仏壇を磨かれているところなんかを想像すると、なんだか親近感が湧き、自分もこころがけようと思いました。

     『運動』は、『健康』とも言い換えられると思います。『運動・健康』と『感謝』はこころもとないのですが、『整理』についてはがんばって取り組んでいます。いろいろと整理法を読みかじり、『GTD(ゲッティングシングスダン)』というものが気に入っています。気になることや、やらなければならないことを頭の中だけに留めておかず、頭の外の信頼のおける、メモ用紙などに書き出して、信頼のできるコーナー(インボックス、というそうです)にまとめておき、順序を決めたリストの上からひとつずつ取り組む、といったものです。これにより、『あれはどうだったっけ、ああ忘れないようにしなきゃ!?』とか『どこいったっけ?』とか『何からすればいいんだっけ?』といったもやもやに使う、脳とこころの無駄が無くなります。

     また、プライベートでは『コーピングレパートリー』という整理法を使っています。すっきりすること、やりたいこと、わくわくすること、夢中になることなどを100も200も書いたリストを作り、常に見ることができるようにする、というものです。この取り組みは、質より量が重要で、人からみてくだらなかったり、些細なことでもよいそうです。これにより、自分の好きなこと(好きだったこと)、楽しいこと、元気になることを忘れずに済みます。ぼくのリストの中には『ペンギンの動画をみる』『ビールの泡のしゅわしゅわや、缶を開けた時の音、匂いを思い浮かべる』なんてのも入っています。

     最近行った一番の、整理整頓の大仕事は「鳥取県社会的養育推進計画」の準備でした。今後10年かけて子どもたちの最善の利益の追求に取り組むこの計画の準備では、里親さんの意見はもちろん、行政・施設職員のみなさん、さらには、今、里親家庭で暮らしている子どもたちと、里親家庭を巣立って社会で働いている方たちからお聴きした、鳥取県の里親さんの強みと課題をすべて書き出し整理しました。

     誰が何に取り組み、どこから手を付けるのか。当所も、この重要なリストの処理の一端を担います。ペンギンやビールのことばかり考えておらず、気を引き締めなければならないところです。


    2020.09.29

  • イノシシのけものみちに思う

     このごろ、ちまたでクマが出ると話題ですが、我が家のまわりにはイノシシが出ます。きっと両親であろう大柄なイノシシ2匹のうしろに中くらい2匹、そのうしろをウリ坊がとっとこ行進しているさまは、大トトロ中トトロ小トトロのようで愛らしくさえあります。我が家の墓の脇を通り道にしており、土砂が崩れたこともありましたが、今ではすっかり(イノシシ一家の)日常の通路として踏み固められ、きれいに舗装されてしまいました。いわゆる『けものみち』ですね。

     人間の脳の神経は、新しいことを覚えると、のび、つながって、新たなネットワークを作っていくそうです。この道すじは、最初こそ細くて情報が通りにくいのですが、何度も通るにつれ、踏み固められて広くなり、通過する情報の交通量が多くなるそうです。さながらイノシシの『けものみち』ですね。

     このみちは、新たな学びや経験を重ねていくほど、交通網として整備されていきます。便利になればなるほど、近道やバイパスも使えるようになり、問題解決というゴールにたどり着きやすくなります。逆に、道の便利が悪いと、強情で融通がきかない、ということになるそうです。

     フォスタリングチェンジプログラム(以下、プログラム)でも、このことをふまえた関わりを学びます。子どもとおとなが一緒に問題解決法を考える『ストップ・プラン&ゴー』という手法では、猪突猛進に『こうったらこうなの!』と、一本道の行き止まりにぶちあたる子どもに対し、まずは感情を落ち着け『こんな方法もあるかもよ~~??』『相手はこう思ってるかもよ~~?』といったふうに、時にはユーモアも交え、さまざまな考え方を伝えます。この寄り添いにより、子どもは、他の人の気持ちを想像したり、こんがらがった問題点をシンプルにしたり、上手に交渉したり、人と協力したりといったことによる問題解決法を学ぶことができます。

     プログラムでは、子どもにことを教える際は、まずおとなが手本をみせるという鉄の掟があります。おとなは、たくさんのルート候補を柔軟に選択して、問題解決するという生き様を見せねばなりません。脳神経の新しいみちは、年齢を重ね刺激が乏しくなるほど、新しく作ることがしんどくなりますので、おとなが道をしめし続けるには、いくつになっても勉強を続けなければいけないようです。

     イノシシ一家も、良いみちを開拓し、ウリ坊をしっかり先導し、墓石を倒さず車に轢かれず、上手に餌をみつけ、家族仲良く暮らしていってほしいものです。

     

    【参考】PRESIDENT Online医学博士奥村歩氏のコラム


    2020.09.02

  • ウェブ会議の手伝いをとおしてきづいたこと

    里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦

     コロナ禍により、地域をまたいで参集する会議が軒並み中止となり、施設長らのウェブ会議・リモート会議(インターネットワークを通して、離れた複数の方が会議を行う)の手伝いをすることが多くありました。なかなかに、すっすすっすとセッティングできるものではなく、やれ機械が反応しない、やれ声が聞こえない、やれパスワードがあわない、などなど、てんやわんやしましたが、何度も手伝いをするうちに要領を得てきましたし、この形態の会議『独特の作法』を学ぶことができました。

     そもそも、手伝いをするまで、『画面のお顔をみながらヘッドホンとマイクで会話する』ということについて、半信半疑というか、まゆつばものというか、信じていないふしがあったのですね。むしろそんなことよりも、電話での、声だけのやりとりに、その方のおもかげを思い起こしながら、よもやま話をまじえた会話を大事にしたり、メールであれば、歌手の宇多田ヒカルのヒット曲「オートマチック」の歌詞にあるような、『アクセスしてみると映るコンピュータースクリーンの中にチカチカしている文字 手をあててみると温かい』というようなことを目指し、情感と魂を込めて文字を打つ!といったことをこころがけていました。

     しかしながら、なかなかどうして、ウェブ会議もおもむき深いものでした。全国ブロック規模の会議などになりますと、コンピュータースクリーン一面に、お歴々の方たちのお顔がタイル状にところせましと並び、一斉にこちらをみているさまは壮観です。ウェブ会議に用いるソフトもよく工夫されており、発言すると(マイクに音声が感知されると)その発言者のお顔がアップになるといった動作があります。(逆に言えば、余計な声を発せないとも言えます)

     冗談ではなく、お顔写りも大事です。明るい窓の方を向いたり、さらには、ライトをあてたり(!?)といったことも行いました。これは大げさではなくて、顔をしっかり照らさないと、先方に見えないのですね。テレビ番組の収録か!?というありさまですが、まさしく、だいたい似たようなものであるわけです。

     こういった会議をコーディネートされる、専門の業者さんもおられ、リモートで取り仕切られるその進行には大変学ばされました。例えば『自分の発言の出番ではない時も、あいづちを打つようこころがけてください』という教えがありました。と、言いますのも、ウェブ会議では、出番ではない時は、前述のとおり、声をひそめておくものなのですが、その間も、お顔は画面に映っていることが多いです。ただでさえ、遠く離れていて、画面と音声だけやりとりですから、その場の空気感が乏しいなか、画面のお顔がムスッとしていたり、他の方向をみていたり、隣の人(画面には映っていない)とひそひそ話をしていたりすると、聴いてもらっている感が乏しく、話しにくいのですね。しかもそれがまた皮肉にも、つぶさによく見えるのです。小さなタイル状でも、大きくあいづちを打ってくださっているのをみると、発言者は安心して話しやすくなるということでした。

     フォスタリングチェンジプログラムでも、このことに関したトレーニングがあります。子どもの話を聴く際、返すことばの内容も、もちろん大事ではあるのですが、それ以上に、その際の表情、しぐさ、声のトーン、目線、姿勢などがとても重要です。聴くにつけ、ほめるにつけ、注意するにつけ、この、ことば以外のコミュニケーション(非言語コミュニケーション)に気を配りましょう、というものです。ある学説では、『態度が9割』なのだそうです。どんなに美しいことばも、態度がともなわなければ、相手の胸に響かない、ということですね。

     コロナ禍のもと、ひととひととの間の、コミュニケーション様式が、大きく変わりつつあります。しかしながら、デジタル信号で、インターネットワークを通しても、礼節についての大事なことは、たいして変わりが無いようです。今一度こころがけたいと思います。


    2020.07.10