里親支援とっとりブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園 | Page 2

社会福祉法人 鳥取こども学園は、キリスト教精神にもとづいて創立されました。その基本理念は『愛』です。

TEL. 0857-22-4200
ホーム > 里親支援とっとりブログ

里親支援とっとりブログ

  • 転換期の里親の想い

    里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦

     

     昨年の夏、厚生労働省が示した「新しい社会的養育ビジョン」を受け、では、鳥取県ではどうするのか、という検討会が毎月行われています。現状のあらゆるデータを分析し、行政・施設・里親等の意見を突合して、将来、何人のこどもたちが保護を必要とし、そのこどもたちの何人を施設が預かり、何人を里親が預かるのかという指標を導き出そうとしています。

     他の県は、「偉い人だけが協議して決める」ですとか、「まだ委員会のメンバーが決まったばかり」というようなところがあるそうですが、鳥取県では、「保護を必要とするこどもたちに関わる全ての方、里親なら里親会員全員、いま施設・里親家庭で暮らしているこどもたちの声はもちろん、里親家庭を巣立たれた方たちの多くの声も聴き取り、できるだけ早いスピードで政策に反映させる」という方針です。

     この大きな転換期に、多くの里親さんの声を集約するため、様々な機会を開いています。先日の集会などは、3時間半という長丁場で丁々発止、けんけんごうごうの意見交換を行いました。鳥取県の里親さんは、かねてより感じていましたが、とても多くの意見がどんどん、活発に出されます。

     「里親になり子どもを預かるのにハードルが高い。子どもの福祉の制度や、保護の現状などは、すぐすぐ理解できない」という声が、新しい里親さんから聴かれます。保護を必要とするこどもを預かる、われわれの分野は、プライバシー保護のため、一般の方にほとんど知られておらず、深く理解するには、とても複雑な取り組みです。また、子どもたちを預かるには、知識と経験・技術と愛情・努力と鷹揚さが必要不可欠です。しかし、このことばかりに注視していては、新しい里親さん、新しい委託を増やすことができません。門は広く、しかし、学びの提供は確実に、という大きな課題があります。

     「施設の子どもたちともっと気軽に触れ合い、子育てのトレーニングをしたい」という意見が多く聞かれます。鳥取県の各施設は、一般家庭とほぼ変わらない小さな生活単位で、家庭的に暮らしています。学校や保育園であれば、日中ワークの一つとして外部の方が参加することもできるでしょうが、一般のおうちの食卓やリビングに、馴染みの無い方が入れ替わり立ち替わり座っていることが無いのと同様、子どもたちが日々暮らしている小さな住まいに、外部の方がやすやすと加わることはできません。これには、子どもたちに失礼のないよう、デリケートな気遣いが必要です。「あ!わたしの大好きななんとかのおじちゃん!またきたの!?」という雰囲気を作るためにどうすればよいのかは、大きな課題です。

     また「子どもが家に来るのを待っている人もいるのに、まだ里親を増やすというのはいかがなものか」という意見も聴かれます。一九五一年に厚生労働省が示した「児童福祉マニアル」には「ある里子の為に家庭を選ぶ場合には、多くの点が考慮されなければならない。もし、同一家庭に数人のこどもをあずける場合には、こどもたちを一緒にあずけることの出来るような家庭を見出さなくてはならない。知的に聡明な子どもは、勇気づけて特性をもっと発展させるような家庭が望ましい。もしつまずきがある子どもなら、このことを理解し、出来るだけのことをやったらよいと激励できる里親がよい。もしも子どもが病院等に通わなくてはならない場合には、なるべく交通の便が良いところの里親を探さなくてはならない。ある子どもは自分と近い年齢の子ども達と一緒に生活し遊ぶ機会が必要である。また、ある子どもは自分の親からもらえなかった愛情とまなざしを必要とし、里親を独占したいと望むことがあるから、他の子どもがいない里親に一人だけ預けることがよい」とあります。NHK紅白歌合戦がラジオ放送だった頃に示された思想を、現代もそのまま重んじています。子どもに最も良い家庭を選ぶために、多くの候補里親が、待機していただく必要があるのです。

     ある里親さんが「里親がみな『うちはこんなことができるよ!うちを必要とする子があればいつでもおいで!』という風におおらかに構え、預かるまでの間、他の里親のおうちの里子や、施設の子どもたちのために役にたてることを探してほしい」と話されました。僕も同意見です。里親登録される方は「子どもたちの役にたちたい!」という一心で、長い研修を受けられ、煩雑な手続きをこなされます。このボランタリズムを決してむげにすることなく、子どもの最善の利益の追求に貢献していただく新しいしくみを作ることは、当所の重大な使命だと感じています。

     

     

     

     


    2018.11.13

  • 所長就任にあたって

    里親支援とっとり 所長・里親等委託調整員 遠藤 信彦

     

     この春、長年に渡って当所の所長を務めておりました藤野が退任しました。藤野は今後、法人の理事長、当所の顧問として、引き続き当所に関わっていきます。(藤野はいろいろなものの顧問をしています)そして、私、遠藤信彦が所長を拝命しました。私ごとですが、二年前、遠藤という家に婿に入りまして、昨年度末までは「昔の名前で出ています」ということで、旧姓を使用しておりましたが、今年度より「遠藤」を名乗っています。

     「所長」で「遠藤」で、ということで、年度当初より、「この人は一体、誰なんだ!?」と、関係者の皆様を戸惑わせてしまい申し訳ないところですが、その都度「南部町、緑水湖のほとりに遠藤という家がありまして~」と前口上を述べています。久しくご無沙汰している方などは、「あ!吉田さん!おっと、遠藤さん!」と躊躇されますが、その際は、「のぶひこさーん!」と呼んで下されば間違いがありません。

     「しょちょう!しょっちょうさーん!」と呼ばれても、私と、フルタイム勤務の秋口さん、パート勤務の事務員の長代さんの、奥様お二人との、2.2人体制の小さな小さな、入所部門のひとホームより小さな部署の所長です。しかし、長い付き合いの上司からは、「鶏口となるも牛後となるなかれ!(大きい団体の元にいるよりも、独立した小さな団体の長である方がよいということわざ)」と叱咤激励されます。これまで、職名に「長」とつく立場になったことがほとんど無く、力不足であることは重々承知しておりますが、日本の社会的養育が家庭的・家庭中心へと大きく変わっていくこの時代に、このお役目をいただいたことを大変に、誇りに思っております。心を新たに、より一層、業務に邁進する所存です。

     所長室に(そのようなものはないですが)籠もることなく、これまでと変わらず、しょっちょう、皆様のお目にかかりますので、今後とも幾久しくご愛顧くださいますよう、法人ブログをお借りして、お願いいたします。

     


    2018.08.21

  • 池田のお父さんとの想い出

    里親支援とっとり 所長 遠藤信彦

     

     2月に、鳥取県里親会東部部会の事務局を長年務め、会の発展に大きく寄与された池田晴隆里父が、闘病の末、逝去されました。葬儀には、里父の関係者をはじめとして、鳥取県の多くの里親並びに関係機関の職員が参列し、また、県外の里親関係者からも弔電が届きました。

     十年近く前のこと、それまで児童相談所が受け持っていた里親会事務局業務が、里親個人に移管されることになり、大変な引き継ぎの作業がありましたが、自ら進んで引き受けられ、様々な機関とのコーディネートに奔走されました。そして、里親自らが会の活動を企画し、運営することの有用性を、身をもって実証されました。

     里親としての養育、里親会の運営についての功績は語り尽くせませんし、多くの方が知るところですが、僕個人の思い出があります。池田のお父さんとの出会いは7年前、初めて東部部会の総会に出席した時です。たどたどしく当所の業務を説明したところ、「おまえに、本当に里親支援が出来るのか?!わしは思わん!」と机を叩かれるという手荒い洗礼を受けました。その日からというもの、毎日のように来所され「あれはどうなっとる!?これはどうするんだ!?」と詰問されました。様々な事業を一緒に取り組み、都度都度、酒を飲み交わし、意見を交わすにつれ、心置きない間柄になっていました。僕は、こういった行政事務的な業務が初めてでしたので、不備や、配慮が足りないことが多々あり、関係者からお叱りを受け、凹むことも多かったのですが、一年と少し経った頃、このことを話したところ、あれだけ「わしは思わん!」「どうなっとる?!」と詰め寄っていたお父さんが「いや!おまえは!ようやっとる!」と言って下さいました。ずいぶん前のことですが、この時のことは忘れることはありません。

     また、工作にまつわる想い出話がたくさんあります。自動車整備士の経験を活かし、家にいらっしゃる時はいつも、お家のガレージの工房で、何かを作ったり、直したりしていらっしゃいました。

     当法人の、子どものおもちゃや、カウンセリングルームのおもちゃなども直してくださっていました。いつも「古希(こき)をこきつかって!」と駄洒落混じりの不平を言う割に、かなり迅速に修理して下さいました。僕が知っているだけでも、乳児部の職員が泊まり勤務の際に使う電気スタンド、幼児が乗って足で漕ぐ乗り物、降雨の重さに堪えきれず支柱が折れてしまった、バザーやもちつきなどの行事に使うポップアップテントなどなど、枚挙に暇がありません。

     筒状になっていて、底にファンがあり、スイッチを入れると軽い素材で作ったおさかながちょっとずつ上部から飛び出してきて、たもですくうというおもちゃがあったのですが、調子が悪くなり修理を頼んだところ「おい!のぶひこくん!ファンの羽根を3枚から4枚に増やしておいたからな!」とおっしゃるので試してみると、風のパワーが強すぎ、ちょっとずつ、一匹ずつ出てくるはずのおさかなが「ドバッ!」と全匹吹き出し、捕まえる難易度が大変高くなっていたなんて笑い話もあります。

     長年、会長を務めていらっしゃった、「おもちゃの病院」でのエピソードもおもしろかったです。「ぬいぐるみを裁縫して治すスタッフは『外科医』、電子部品のプログラムを書き換えてエラーを治すスタッフは『神経医』とか言うのだぞ」とか、「ある日『外科医』が、小さな女の子がクマのぬいぐるみを治してくださいと持ってきたところ『よしよし!』とばかりに女の子の眼の前で『ガバッ』とぬいぐるみの皮を剥がし、中の詰め物だけにしてしまったら、女の子が、『こんなのわたしのクマちゃんじゃない!』とショックを受け、泣いて帰ってしまった。『外科医』はこのことに反省し、それからは、『外科手術』をする時は、『ではオペ室にはいりまーす』と、子どもの眼から隠すことにしたんだよ」とか、「『神経医』たちは、電子部品をコンピューターに繋いでプログラムを書き換えたりして修理する。わしはネジや歯車なんかが専門だからあいつらがやってるデジタルなことはよくわからん!」などなど、子どもが喜ぶ顔見たさに、ボランティアに勤しむスタッフの方々の熱意とユーモアが溢れていました。

     当法人のバザーでも、「こんなこともやってみよう!あんなこともやってみよう!」と、たくさんの企画を提案されました。本物の弓と矢をミニチュアにして、矢が当たると「パタン!」と倒れる精密な的とのセットで繰り広げられる「射的ゲーム」や、上部にある複数のひもを引っ張ると、ボックスの中から何かしらの景品がランダムでひっぱりあげられる「もうつれんゲーム」は、今やバザー定番模擬店として、毎年多くの子どもが来店します。(ちなみに「ひもが、もつれない」と「もう釣れない」と駄洒落でひっかけてあります)

     こんな話を、僕よりもっと昔の池田里父を知っている、学園を退所された方に聞いたところ、「あの人は何十年も昔から、次は何を作って子どもを喜ばせてやろう!って、やっていた」とのことでした。

     僕も工作を嗜んでいますので、作業を見学していると、「この幼児ちゃんが乗るおもちゃの車は、負荷がかかる部分をもっと補強せんといかん!幼児ちゃんの手にあたって怪我せんよう、隠してアルミの芯棒を入れよう!」「このそうめん流しの竹は、食べるとき子どもが触るから、かどのバリをとっとかないかん!」と、工夫を解説して下さいました。

     九州男児らしい、豪放磊落な物言いに反して、実は、大変細やかに、子どもの育ちと、人と人との関わりを見つめていらっしゃる方でしたので、まるで、隠して芯棒で補強するように、竹のバリを削り滑らかにしておくように、人知れず、たくさんの方を気遣い、間をとりもっていらっしゃいました。

     一人一人と丁寧に、膝を突き合わせて熱く対話されるその生き様は、多くの方から信頼を寄せられました。池田のお父さんの葬儀を執り行った葬儀社は、故人を偲んで短歌を詠みます。池田のお父さんについては

     

    子どもらに

    笑顔と安らぎ与えんと

    熱き想いは 

    仲間の輪広げ

    うたわれました。

     池田のお母さんへの、ほんの短い聞き取りで、たった31文字で、よくぞこんなに、この方の生き様をあらわしたものだと、プロの、胸を打つ、ハートのこもった仕事に感心しました。

     この歌を胸に、残された我々は、使命を全うしたいと思います。

     在りし日の、あの人情溢れるどら声を偲び、学んだ教えにもとるところはないか日々かえりみながら、業務に取り組んでいます。

     

     

     

     

     


    2018.06.01