里親支援とっとりブログ | 社会福祉法人 鳥取こども学園 - Part 2社会福祉法人 鳥取こども学園 | Page 2

社会福祉法人 鳥取こども学園は、キリスト教精神にもとづいて創立されました。その基本理念は『愛』です。

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  • 5つのワーキンググループ① コンプライアンスの確認

     鳥取県では、里親への委託をよりいっそう推進するため、里親と施設、児童相談所の三位一体で、5つに分かれて考えるワーキンググループを作りました。グループの取り組みを、シリーズで書きたいと思います。

     

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     さまざまな事情で、自分の家庭で暮らすことのできない子どもは、地域において家庭的な雰囲気の中で育つことが望まれます。里親家庭はその最たるものです。子どもは、ずっと同じ養育者に見守られて暮らすことで、この人たちは信頼するに足り得て、自分は存在してよく、この世界は良いところだと感じることができます。里親家族や近所の方の、赤ちゃんが生まれ成長し、社会に出て働き、伴侶を得て子を育て、老いて病に伏せり死んでいくといったライフステージを目の当たりにすることで、自分の将来を思い描くことができます。少人数のひと家庭の、さまざまな年代の方と暮らすことで、人との適切な関係の取り方を学ぶことができます。

     しかし、公的な子育てを、地域のひと家庭において行うことには、課題もあります。

     コンプライアンスの確認が必要です。

     鳥取県が里親に子どもの預かりをお願いすることは、『委託措置』といい、鳥取県が責任をもってこう決めましたよという強いことばです。現代の日本社会において、福祉のサービスは、おおむね、利用者と提供者の『契約』により行われていますが、子どもを保護し養護する分野は、『措置』という行政処分によって行われます。保護された子どもが育つための費用のほとんどは、税金によってまかなわれています。

     このため、預かる里親にも、コンプライアンス(法律、制度他、その立場において守るべきことを守ること)の徹底が求められます。家庭に恵まれない子どもに、家庭での生活を提供したい、社会貢献したいというボランタリズムに加えて、自身の家庭において、鳥取県行政の、社会的養護の一角を担うということを認識する必要があるのです。

     児童相談所が定める計画にそって子育てをする必要があります。この計画は、子どもがどういう自分になりたくて、まわりはそれをどう支えていくか、という視点で作られています。

     また、家風を振り返る必要があります。全ての人は、自分が育ったように子どもを育て、どの家庭にも、そのいえいえの家風があります。里親は、自身の育ちと歴史に根ざした、自身の家の家風について、コンプライアンスから離れていないか、常に振り返る必要があります。

     また、連携する必要があります。ひと家庭だけで、その子どもへの責任をすべて負うのではありません。児童相談所や施設とのチーム連携をもって、鳥取県が保護した子どもを育てていきます。

     しかし、児童相談所が、子どもに一日も早く落ち着いた暮らしを提供したいがため、まずは日々の生活を整えたいがために、これらのことの確認がおろそかになってしまうことがあります。伝えるのは、支援者側の責任です。このことについて話し合っています。(5つのワーキンググループ② 制度の周知 に続きます)

     

    (この文章は、鳥取こども学園発行学園だより52号の原文です)


    2022.11.28

  • いもほりに行ってきました!

    里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦

     鳥取全県の里親さんと顔なじみになりたいので、里親さんが集まる機会には極力参加させてもらっていたのですが、コロナ禍のため控えており、お誘いも無かったところ、このたび、久しぶりに声をかけてもらえたので、芋掘りイベントに参加してきました。

     ご無沙汰していた方が多く、会うひと会うひとと近況の報告を交わしながら、うねにそって掘り進めているうちに、里子の、小学生の男の子と鉢合わせました。イベント終了までタッグを組むことになります。

     この男の子のことはよく知っていますが、これまでそれほど遊んだことがなく、即席コンビです。そのわりに息ピッタリで掘り進めます。

     

    「これはでかいぞ!きみはそっちから!底から掘り下げて!」

    「よし!じゃあ底で貫通させよう!手が届いたらトンネル完成だ!」

     

    大物が見つかるとなおさら大事に、折らないよう傷つけないよう掘り上げます。まわりに自慢することはかかせません。

     

     いつも芋掘り指導してくださる方から「こう、ぽっこりしている箇所は『レン』で収穫できるから、手探りでみつけてまわりから掘るように」と教わったので、さもそういうところを見つけたあかつきには

     

    「よし!ここは『レン』だぞ!」

    「うん!『レン』でいこうぜ!」

     

    きっと、連なってとれるので「連」というのだと思うのですが、意味を知ろうが知らまいが、意気だけはあいます。芋づる式の『レン』で収穫できたときの達成感は格別です。もちろん自慢も忘れません。

     

     50てまえのおっちゃんと小学生男子の快進撃は続きます。

     

    「今度はあのおばちゃんたちのお手伝いをしよう!」

    「こんなにいっぱいありがとねえ!」とほめられるとまんざらでもありません。鼻息荒く、結構な数を掘りあげました。

     

     なんてことのないやりとりなのですが、感慨深いものがありました。

     この男の子は小さなころ、わりあい落ち着きが無く、集中がむずかしいところがありました。里親さんはもとより、多くのおとなが支えています。こうして、即席コンビで作戦会議をして、楽しく作業できたこと、落ち着きぶりに、全員野球による支えの、たまものを見た気がしました。

     

    「おかあちゃん!このでかいいも!もらってかえるやつだから持っていっておいて!」

     

     それですのに、里母さんにはえらそうな物言いで、ちょっと笑ってしまいました。里母も大したもので、「自分で行きなよもう」と苦笑しながら意に介しません。作業はがんばるけど、かあちゃんには甘えちゃう、というのも、とても健康だと思います。

     

     抜けるような秋晴れのもと、たくさんのおいもと、楽しかったやりとりの満足感をもって帰路につきました。


    2022.10.16

  • 里親によるショートステイ・トワイライトステイに思うこと③

    里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦

     

     親御さんの病気など、急なことで子育てがむずかしいとき、いっとき子どもを預けることができる「子育て短期支援事業(ショートステイ・トワイライトステイ)」という、市町の取り組みがあります。

     昨年度、法律がかわり、このショートステイ・トワイライトステイを、どんどん里親さんに受け入れてもらおうという方針が打ち出されました。

     ここに至るまで、また、至ったのち、さまざまなドラマがあります。シリーズで書きたいと思います。(このパート③が最終です)

     

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     児童相談所が子どもを『保護』し、長期間里親や施設に預けることは、鳥取『県』行政のしごとです。これまで、市町村の職員さんは、「遠藤村の遠藤さんっちゅうかたは里親さんをしょうられるだってなぁ?」程度に、自分のたずさわる地域に里親さんがいることを、おぼろげには分かっていても、里親名簿もなく、人柄も取り組みも知らないという現状がありました。

     親御さんの病気など、急なことで子育てがむずかしいとき、いっとき子どもを預けることができるショートステイ・トワイライトステイの取り組みは『市』や『町』のしごとです。今後、里親さんが、鳥取県行政からのみではなく、自分の暮らす『市』や『町』からのお役目もになうことで、地域にもっと身近な存在となります。

     里親さんは、古くから、子どもの最善の利益のために、つつましやかに人知れず取り組んでこられました。自分が居をかまえ暮らしている地域全体から『困ったときや、疲れたときはあの遠藤さんを頼ればいいだでぇ?』『ええことをしょうられますなあ!感心感心!がんばってつかんせえよ!』『わしらのかわりにすんませんなあ。なんか手伝えることはないかいな?』といったふうに、応援のエールが、聞こえてくることが理想です。

     地域の子育て支援をもっと充実させたい市町村の職員さん、地域にもっと貢献したい里親さん、さまざまな人の想いが実り、この理想に、いくばくか近づくことを、とても嬉しく思っています。

     

    (この文章は、鳥取県里親会東部部会発行「東部里親だより号外」に掲載されたものの原文です)


    2022.09.12