東部サロン「児童相談所元所長に聞く、児童相談所の取り組みと苦労、大事にしていること」 | 社会福祉法人 鳥取こども学園社会福祉法人 鳥取こども学園

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里親支援とっとりブログ

東部サロン「児童相談所元所長に聞く、児童相談所の取り組みと苦労、大事にしていること」 

  里親支援とっとりが行うサロンについては、里親さんがどんなことを知りたいか、どんなことを知ってもらいたいか、ということを考えて、毎度毎度、趣向を凝らしたテーマを設けています。里親さんは、保護を必要とする子どもを預かり、養育に全力を尽くすのがお役目ですが、目の前の子どものありようのみならず、自らの元に子どもが預かられるまでの、家庭での暮らし、保護者と子どもの想い、家族分離の過程など、様々なドラマを知っておく必要があります。去る10月5日、児童相談所長を務めた経験のある、鳥取こども学園希望館花川館長より、児童相談所の取り組み・実情・苦労と大事にしていることなどを聞き、ざっくばらんにおしゃべりしながら、理解を深めました。

 児童相談所は、全国にだいたい210ヵ所あるそうです。鳥取県には3ヵ所ありますが、550万人が暮らしているお隣の兵庫県に、出張所も合わせて9ヵ所しかないのに比べて、人口57万人の鳥取県に3ヵ所あるのは、手厚い体制だそうです。

 児童相談所の業務は、地域の実情やニーズの把握とそれに対応した事業、専門的な知識や技術を必要とする対応、児童や保護者、家庭に関する必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定、児童の一時保護、里親に対する相談や情報提供、助言、研修などの援助、などなど、多岐に渡っていますが、やはり主となるのは児童の相談と、必要な際の保護です。

 鳥取県に3ヵ所ある児童相談所のうち「福祉相談センター」が、東部の相談を担っています。女性相談課もあるので、総合して、「福祉相談センター」という名前なのだそうです。児童福祉司さんは、お1人で、在宅ケースを20人~40人、里親さんに措置、施設に入所しているケースを30人~40人も担当しているそうです。もっとも大事にしていることは、「子どもにとってもっとも良い、利益の追求」「子ども、保護者の意向を十分に聴く」ということだそうです。

 この子を今のままお家に置いておけない、と考えた場合「一時保護所」という部署で身柄を預かりますが、複数人の子どもたちとの、生活を通じて様子を知り、検討するそうです。「この子とこの子はいっしょにしたくないなあ・・・」とか、「この子はご飯の好き嫌いが多いなあ・・・」「お行儀が悪いなあ・・・」「よく隣の子にちょっかいを出すなあ」などなど。「この子は、きつい言葉を使ったり暴れたりしていたけど、落ち着いて一緒に話すと楽しくおしゃべりできるなあ」というようなことを感じとり、その後の支援に生かすそうです。

 児童相談所というお役所は、ずっと前から、例えば、非行問題が多発していた昭和60年代(ぼくは小学生~中学生のころですが、大問題でした。学校の中を自転車で走り回って掲示物を破いてまわったり・・・)の頃は、「非行問題をなんとかしろ」と。また、不登校が問題になったころは「不登校をなんとかしろ」と。そして今は「発達障害を~」「児童虐待を~」だそうです。人を増やすお金もないまま、また、どうしたら良くなるかという技術も知識、先行例も無いまま、時代に要求される子どもたちの問題について、その都度その都度、頭を絞り、汗を絞りながら対応してきたそうです。

 なまなましい業務の大変さとともに、興味深い話もたくさん聴きました。このたび厚生労働省が示した「新しい社会的養育ビジョン」の根本の考え方に、「ハリー・ポッター」の作者J.K.ローリング氏の取り組みが少なからず影響を与えているそうです。J.K.ローリング氏が作った非政府組織「ルーモス」(ポッターが唱える、明かりがつく呪文ですね)が、子どもが家庭的な環境で育つことの重要さを強く訴えており、この考えを参考のひとつにしているそうです。

 ぼくもハリー・ポッターは大好きで、ポッターやハーマイオニー、ロンたちの冒険と、日々の暮らしを、わくわく、ほっこりしながら見ていました。まだ全話見ていないのですが、ちなみに初期の、みんなが小さい頃の騒動が好きです。完結編のあたりでは、ポッターはスリムマッチョの好青年に、ハーマイオニーはものすごい美人になってしまいましたので。J.K.ローリング氏は、離婚、母の死、無職、貧困、うつ病などを経験し、子育てを続けながら、ハリー・ポッターシリーズを書き上げました。作中で、最も恐ろしいディメンター(吸魂鬼)という黒いフードとマントを纏った、周囲の人々の幸福な気持ちを食べ、絶望と憂鬱をもたらし、現れると周囲の空気も冷たくなるという生き物が出てきますが、この怪物は、J.K.ローリング氏が経験したうつ病がもとになっているそうです。「光よ!」という呪文の名前の団体の取り組みも踏まえ、ポッターのみならず、J.Kローリング氏個人についても、改めて興味が湧きました。

ディメーター

 

 ポッターの世界と日本の社会的養育のつながり、現代社会と子どもを取り巻く環境の変化、その時代時代に対応してきた児童相談所、と、さまざまなことを考えさせられるサロンとなりました。参加された里親さん方も、いろいろと感じるところがあったと思います。今後も、学びや気づきの豊かなサロンを開催していこうと思います。

 


2019.01.29