転換期の里親の想い | 社会福祉法人 鳥取こども学園

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里親支援とっとりブログ

転換期の里親の想い

里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦

 

 昨年の夏、厚生労働省が示した「新しい社会的養育ビジョン」を受け、では、鳥取県ではどうするのか、という検討会が毎月行われています。現状のあらゆるデータを分析し、行政・施設・里親等の意見を突合して、将来、何人のこどもたちが保護を必要とし、そのこどもたちの何人を施設が預かり、何人を里親が預かるのかという指標を導き出そうとしています。

 他の県は、「偉い人だけが協議して決める」ですとか、「まだ委員会のメンバーが決まったばかり」というようなところがあるそうですが、鳥取県では、「保護を必要とするこどもたちに関わる全ての方、里親なら里親会員全員、いま施設・里親家庭で暮らしているこどもたちの声はもちろん、里親家庭を巣立たれた方たちの多くの声も聴き取り、できるだけ早いスピードで政策に反映させる」という方針です。

 この大きな転換期に、多くの里親さんの声を集約するため、様々な機会を開いています。先日の集会などは、3時間半という長丁場で丁々発止、けんけんごうごうの意見交換を行いました。鳥取県の里親さんは、かねてより感じていましたが、とても多くの意見がどんどん、活発に出されます。

 「里親になり子どもを預かるのにハードルが高い。子どもの福祉の制度や、保護の現状などは、すぐすぐ理解できない」という声が、新しい里親さんから聴かれます。保護を必要とするこどもを預かる、われわれの分野は、プライバシー保護のため、一般の方にほとんど知られておらず、深く理解するには、とても複雑な取り組みです。また、子どもたちを預かるには、知識と経験・技術と愛情・努力と鷹揚さが必要不可欠です。しかし、このことばかりに注視していては、新しい里親さん、新しい委託を増やすことができません。門は広く、しかし、学びの提供は確実に、という大きな課題があります。

 「施設の子どもたちともっと気軽に触れ合い、子育てのトレーニングをしたい」という意見が多く聞かれます。鳥取県の各施設は、一般家庭とほぼ変わらない小さな生活単位で、家庭的に暮らしています。学校や保育園であれば、日中ワークの一つとして外部の方が参加することもできるでしょうが、一般のおうちの食卓やリビングに、馴染みの無い方が入れ替わり立ち替わり座っていることが無いのと同様、子どもたちが日々暮らしている小さな住まいに、外部の方がやすやすと加わることはできません。これには、子どもたちに失礼のないよう、デリケートな気遣いが必要です。「あ!わたしの大好きななんとかのおじちゃん!またきたの!?」という雰囲気を作るためにどうすればよいのかは、大きな課題です。

 また「子どもが家に来るのを待っている人もいるのに、まだ里親を増やすというのはいかがなものか」という意見も聴かれます。一九五一年に厚生労働省が示した「児童福祉マニアル」には「ある里子の為に家庭を選ぶ場合には、多くの点が考慮されなければならない。もし、同一家庭に数人のこどもをあずける場合には、こどもたちを一緒にあずけることの出来るような家庭を見出さなくてはならない。知的に聡明な子どもは、勇気づけて特性をもっと発展させるような家庭が望ましい。もしつまずきがある子どもなら、このことを理解し、出来るだけのことをやったらよいと激励できる里親がよい。もしも子どもが病院等に通わなくてはならない場合には、なるべく交通の便が良いところの里親を探さなくてはならない。ある子どもは自分と近い年齢の子ども達と一緒に生活し遊ぶ機会が必要である。また、ある子どもは自分の親からもらえなかった愛情とまなざしを必要とし、里親を独占したいと望むことがあるから、他の子どもがいない里親に一人だけ預けることがよい」とあります。NHK紅白歌合戦がラジオ放送だった頃に示された思想を、現代もそのまま重んじています。子どもに最も良い家庭を選ぶために、多くの候補里親が、待機していただく必要があるのです。

 ある里親さんが「里親がみな『うちはこんなことができるよ!うちを必要とする子があればいつでもおいで!』という風におおらかに構え、預かるまでの間、他の里親のおうちの里子や、施設の子どもたちのために役にたてることを探してほしい」と話されました。僕も同意見です。里親登録される方は「子どもたちの役にたちたい!」という一心で、長い研修を受けられ、煩雑な手続きをこなされます。このボランタリズムを決してむげにすることなく、子どもの最善の利益の追求に貢献していただく新しいしくみを作ることは、当所の重大な使命だと感じています。

 

 

 

 


2018.11.13